天鐘(8月22日)

63年前、世界を驚かせた「スプートニク・ショック」。冷戦の最中、科学技術で世界に冠たる米国の頭越しに、旧ソ連が無人ながら人類初の人工衛星の打ち上げを成功させた▼元々弾道ミサイル用のロケットで、米国の鼻を明かし西側を震撼(しんかん)させるには.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 63年前、世界を驚かせた「スプートニク・ショック」。冷戦の最中、科学技術で世界に冠たる米国の頭越しに、旧ソ連が無人ながら人類初の人工衛星の打ち上げを成功させた▼元々弾道ミサイル用のロケットで、米国の鼻を明かし西側を震撼(しんかん)させるには十分だった。米国は慌てて翌1958年、航空宇宙局(NASA)を組織。アポロ計画から今に至る宇宙開発競争の火蓋(ひぶた)が切られた▼ロシアのプーチン大統領は先週、国内で開発した新型コロナウイルスのワクチンを世界に先駆けて承認すると発表。米国のトランプ大統領も「11月の大統領選前には」と対決姿勢で、ワクチン競争が過熱している▼このワクチンの名前がまた挑発的な「スプートニクV」。大統領選を控え、トランプ氏はここで苦杯を嘗(な)める訳にはいかない。世界が注目し遺恨が絡むワクチン開発競争だが、ルールを飛び越す拙速さが心配だ▼安全性の証明には10年かかると言われるが、ロシアは臨床試験から2カ月、最終治験の入り口での“見切り発車”。中国、英国、EUも割って入り、米国の“ワープ・スピード作戦”級の超高速で鎬(しのぎ)を削っている▼試算で20億回分のワクチンが準備可能と言うが“倫理なき争奪戦”は必至だ。富める国が独占、大方の国には悲しくも無縁の予防薬。貧富の壁を越え、いかに予防薬を届けられるか―英知が試される。その試金石が東京五輪である。