時評(8月21日)

新型コロナウイルス感染症の終わりが見えない。日本では今夏、1日の新規感染者が千人超の日が続いた。盆の里帰り抑制などが効き下降傾向はうかがえるが、集団感染や重症者、死者が増え、沖縄県などで医療が逼迫(ひっぱく)しつつある。猛暑で熱中症が相次ぐ.....
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 新型コロナウイルス感染症の終わりが見えない。日本では今夏、1日の新規感染者が千人超の日が続いた。盆の里帰り抑制などが効き下降傾向はうかがえるが、集団感染や重症者、死者が増え、沖縄県などで医療が逼迫(ひっぱく)しつつある。猛暑で熱中症が相次ぐ中、第2波の危機を乗り切れるか際どい局面を迎えた。[br] 新型コロナは無症状が多く捉えにくい。確認される感染者は氷山の一角で、実態推定にはPCR検査数や陽性率、致死率も一緒に見る必要がある。感染者は緊急事態宣言下の第1波に比べ2倍以上だが、検査が増えた結果、東京の陽性率は4月に一時30%を超えたのに対し8月は7~6%だ。[br] 世界保健機関(WHO)の指針は、外出制限などを緩和する際、検査陽性率5%未満を推奨する。日本も検査を拡充し陽性率を5%まで下げることが目安となる。ただ、検査は手段であって目的ではない。やみくもな実施ではなく、症状がある人や濃厚接触者らを効率よく迅速に検査する態勢づくりを求めたい。[br] 感染者が国内で初めて見つかって7カ月余、多くの教訓を得た。3密や大声会話の回避、人との距離、手洗いやマスク着用の感染予防の基本が確立してきた。高齢者の予防に努め、治療も習熟して重症者率が下がり状況が変わった。いつまでも「未知の新型」と怖がる時ではない。[br] ウイルスはもはや身近にいる。リスクがゼロではないが、会食を控えたりすれば「うつらない、うつさない」実践はできる。感染の場は「夜の街」から家族や職場へと移ってきた。人の接触を減らしながら、地域や個人ごとにめりはりのある対策で感染はかなり防げる。[br] 人口当たりの感染者が全国で最も多い沖縄では県独自の緊急事態宣言が出されている。支援を強めるべきだ。愛知県と大阪府は陽性率が高めに推移しており、検査が少な過ぎて危うい。[br] 今後数カ月でワクチンや薬の開発が進むだろう。世界中でこれほど多大な努力が特定の感染症に注がれた例はかつてない。現代医学は発展が目覚ましい。どこかで突破口を開くはずだ。専用病院の確保や治療改善で救命率の向上も期待できる。[br] 新型コロナ対策は「ハンマーとダンス」を繰り返す時期に入ったともいえる。急激な拡大をハンマーでたたき、感染が減ればウイルスとダンスするようにうまく付き合う戦略である。戦後最悪の経済危機を脱するためにも、政府は感染拡大防止の方針を明示し、コロナを脅威と感じない程度に抑えるべきだ。