天鐘(8月21日)

小学校の卒業記念で校庭の片隅にタイムカプセルを埋めた。自分への手紙、笑顔の写真、全員の寄せ書き…。世の中が千年紀に沸いた2000年の夏。久しぶりに旧友と再会し、ワクワクしながら開けると▼思い出の品々は水浸しだった。紙の類いはふやけ、文字が判.....
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 小学校の卒業記念で校庭の片隅にタイムカプセルを埋めた。自分への手紙、笑顔の写真、全員の寄せ書き…。世の中が千年紀に沸いた2000年の夏。久しぶりに旧友と再会し、ワクワクしながら開けると▼思い出の品々は水浸しだった。紙の類いはふやけ、文字が判別できない。異臭が鼻をつく。シートの上に並べて天日干しにしたが、誰も持ち帰ろうとしない。皆で顔をしかめて苦笑いした▼浸水には粘土鉱物のベントナイトが有効らしい。水を吸収して膨らむ。非透水で土木工事など用途が広い。1970年の大阪万博で埋めたタイムカプセルも保護する。5千年後の開封が楽しみだ▼高レベル放射性廃棄物は原子力利用の負の産物。毒性が極めて強く、放射能が元のウラン鉱石並みに減少するまで数万~10万年。300メートルより深い地下で半永久的に隔離する。革新的技術が開発されない限り、再び開くことがないであろうタイムカプセル▼最終処分場は圧倒的な拒否反応を伴う。選定調査に前向きな北海道寿都町の人口は3千人弱、高齢化率40%。巨額交付金への期待を隠さない。次世代への責任に総論賛成も、周辺は各論反対の大合唱。進展は見通せない▼地層処分は万年単位。その存在を遠い未来に知らせる必要がある。課題を棚上げに突き進んだ原子力政策の混迷も、伝えるべき教訓か。手段の一つに挙がるタイムカプセルに同封して。