次期衆院選の青森1区は元職の升田世喜男氏(63)が立憲民主党の公認候補予定者に決まったことで、自民党現職の江渡聡徳氏(64)、共産党新人の齋藤美緒氏(40)の3氏による争いが濃厚となった。自民は新型コロナウイルス対策の不手際で逆風にさらされ、「厳しい戦い」(党青森県連幹部)となるのは必至の情勢。一方、立民と共産はこのまま野党共闘が実現しなければ非自民票を奪い合う形に。与野党は共に課題を抱えたまま、政治決戦の準備を急ぐ。[br] 江渡氏は県内小選挙区が1減の3となった前回の17年、選挙のたびに小選挙区と比例代表の候補を入れ替える「コスタリカ方式」に基づき、比例から出馬。新区割りの1区に挑戦するのは今回が初となる。[br] 旧2区選出で、大票田の県都・青森市での知名度は高くない。加えて布マスク配布など政府の新型コロナ対策に対する国民の不満は強く、自民が批判にさらされている状況にある。[br] 対照的に升田氏は、県都を含む旧1区で戦った経験がある。擁立する立民は国民民主党との新党結成で勢力が拡大する。だが自民関係者は、数々の政党を渡り歩いてきた升田氏の経歴を批判し、「勝てるところに付いて回っているだけだ」と意に介さない。自民県連の清水悦郎幹事長は「複数の相手と戦うことは想定内。(コスタリカで比例に回る)津島淳衆院議員と連携し、組織力を生かして戦い抜く」と気を引き締めた。[br] 一方、共産は昨年6月に齋藤氏擁立を発表し、他党に先駆けて政治決戦の準備を整えてきた。党県委員会の畑中孝之委員長は「県民に対し責任を持って推薦できるのは齋藤氏しかいない」と強調する。[br] 昨年の参院選では野党共闘が実現した。次期衆院選に向け、今後共闘が議論されるとみられるが、一貫して反核燃を訴えてきた立場から、原子力施設が立地する六ケ所村や下北地方を含む1区からの出馬は譲らない構えだ。「(立民と戦う可能性は)十分にある。党として、自民との政策の違いを鮮明にして戦う」と力を込めた。