天鐘(8月9日)

先日までの蒸し暑さには閉口した。日中の最高気温が30度前後に上昇し、梅雨の湿気が熱を帯びてまとわりつく。一気に跳ね上がる不快指数。3週間ほど前にウナギで精をつけたはずなのに、早くも体が音を上げた▼体調が万全なら脂物も大歓迎だが、こうなると食.....
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 先日までの蒸し暑さには閉口した。日中の最高気温が30度前後に上昇し、梅雨の湿気が熱を帯びてまとわりつく。一気に跳ね上がる不快指数。3週間ほど前にウナギで精をつけたはずなのに、早くも体が音を上げた▼体調が万全なら脂物も大歓迎だが、こうなると食指が動かない。口にしやすく、清涼感があって、満足が得られるメニューは。手間も掛けたくないと考えを巡らせる。そして大概は素麺(そうめん)にたどり着く▼醍醐天皇の命で編集された法令集『延喜式』。内容は宮中の儀式や作法に至るまで事細かい。五節句の七夕(しちせき)に欠かせない供え物は「索餅(さくべい)」。小麦粉や米粉を練って縄状にした唐菓子で、素麺の原型との説がある▼七夕(たなばた)といえば星の伝説。行事の由来は織り姫にあやかり裁縫の上達を願う中国の「乞巧奠(きこうでん)」、女性が着物を織る日本古来の神事「棚機」とも。両者に共通する糸に例えられる素麺が行事食として伝わるのは興味深い▼小麦は毒を消す。そんな言い伝えから、素麺には邪気払いや無病息災への祈りも込められた。そして現下のコロナ禍である。医学的な効果は期待できないとしても、疫病退散と念じて細麺をすすりたくなる▼立秋が過ぎ、北東北では梅雨明けの判断が見送られた。ただ週間予報を見る限りでは、間もなく本格的な夏、いや残暑がやってくる。素麺の出番が増えそうだ。涼しいうちに新しいレシピでも考えよう。