八戸港の漁業施設の高度衛生化などを盛り込んだ水産庁の「八戸地区特定漁港漁場整備事業計画」が本年度で終了する。2002年度から約20年間の整備により、施設の更新や耐震化が進んだ一方、新設の荷さばき施設A棟は稼働が低迷。整備方針の柱とも言える港内3カ所に分散する市設魚市場の機能集約は実質的に断念した。特に計画に盛り込まれながらも、整備が先送りされた第1魚市場(鮫地区)は老朽化が著しく、建て替えや移転を含め、今後の対応が課題となりそうだ。[br] 計画によると、事業主体は、主に荷さばき施設が市、岸壁は青森県で、それぞれ国の補助を受けて手掛けた。事業費は総額187億8200万円に上る。[br] 港内3カ所にある市設魚市場のうち、館鼻地区の第3魚市場に閉鎖型の荷さばき施設A、B、C棟を新設。小中野地区の旧第2魚市場跡地にはD棟を建設中で、20年度内に供用を開始する予定だ。さらに各岸壁の耐震化も進めた。[br] 一方、魚市場の機能集約は計画通り進まなかった。当初、館鼻に建設予定だったD棟は地元の要望を受け小中野に変更。11年に発生した東日本大震災を機に、港湾の構造上、波の影響が比較的少ない同地区の特長を重視したためだ。[br] 鮫の第1魚市場については、もともとA棟に機能移転する方針だったものの、A棟は12年の稼働以来、毎年の水揚げが目標の1割にも満たない状態が続き、市民から厳しい視線が注がれている。現実的にA棟への移転は不可能で、国の計画でも「(第1は)しばらく存続し、段階的に館鼻地区に移行していく」と、実質的な先送りとなっている。[br] 大中型巻き網船団などが対象の第1魚市場は、19年の水揚げが4万5871トンと八戸港全体の年間の7割を占める。しかし、荷さばき施設は1966年に建設され、老朽化が顕著。現在、コンクリートがはがれ、鉄筋がむき出しになっている柱もある。施設には卸売事業を手掛ける八戸魚市場や業界団体の事務所なども入居している。[br] 来年度以降の対応について、水産庁の担当者は取材に「計画の終了や変更、新計画策定といった、具体的に説明できるものはない」と、白紙の状態を強調。さらに地元関係者と調整も必要との認識を示した。