【全国から生徒募集検討】先進校・岩手県立葛巻高のケースは

2019年に完成した山村留学生寄宿舎。町外から入学した生徒が生活する
2019年に完成した山村留学生寄宿舎。町外から入学した生徒が生活する
青森県立高校の教育環境充実を図るため、県教委が導入の検討を決めた生徒の全国募集。5日に改定された県立高校教育改革推進計画基本方針に盛り込まれており、早ければ2023年度以降に実施される。人口減少や少子化が進む中、生徒の確保に向けた取り組みの.....
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 青森県立高校の教育環境充実を図るため、県教委が導入の検討を決めた生徒の全国募集。5日に改定された県立高校教育改革推進計画基本方針に盛り込まれており、早ければ2023年度以降に実施される。人口減少や少子化が進む中、生徒の確保に向けた取り組みの一環で、学校の存続や地元自治体の発展につながる可能性を秘めている。既に全国から生徒を受け入れている、岩手県葛巻町にある県立葛巻高の事例から課題を探った。[br] 岩手県の内陸北部に位置する葛巻町。全国から生徒を募集する「くずまき町山村留学制度」は、町内唯一の高校存続に向け、町が15年度から導入した。[br] 応募した生徒は町が選考し身元引受人となるため、家族で転住する必要がない。県外から入学した生徒は親元を離れ、寄宿舎で共同生活しながら学校に通う。初年度の山村留学生は1人だったが、20年度は過去最多の16人が入学。今では全校生徒131人中、29人が町外からの“留学生”だ。[br] 入学理由はさまざまだ。「自然の中で生活や勉強ができたらいいなと思っていた」と語るのは、埼玉県出身の1年舞原稜大さん(15)。中学生の時、学校に行きづらかったという同県出身の1年髙橋優月さん(15)は「埼玉以外にいろいろな場所があることを知り、山村留学に挑戦してみようと思った」という。[br] 同校では進学希望者と就職希望者で2コースに分かれ、生徒一人一人の進路に応じた授業が行われる。町の基幹産業である酪農体験や、祭りなど町の行事に参加する機会があるのも魅力の一つだ。[br] 盛岡市出身の1年畑周さん(15)は「葛巻で酪農家になるのが夢」と目を輝かせる。木村基校長は「町の中だけで育った生徒にとっても県外から来た生徒にとっても、お互いに良い刺激を与え合えているのではないか」と手応えを語る。[br] 山村留学生が年々増加している背景には、町の手厚いバックアップがある。17年に、同校の生徒であれば無料で通うことができる学習塾を学校の敷地内に開校。19年には学校から徒歩10分の距離に寄宿舎を整備した。木村校長は「何かメリットがなければ生徒は来ないが、受け入れ体制を整えるのは学校だけでは難しい」と指摘する。[br] 山村留学制度を県内外に浸透させるため、広報方法も工夫。19年は東京都で宣伝活動を行い、全国から27人の応募があった。 担当する町教委こども教育課の村木晋介係長は「町外の高校は遠く、葛巻高がなくなると学校に通えなくなる子どもが出てくる」と高校存続の重要性を強調。学校と地元自治体の協力関係の構築は不可欠だ。[br] 今後は、卒業生の県内定着も後押しする考え。今春、山村留学生の1人が初めて県内企業に就職した。「高校の存続と発展が地域振興にもつながる。いずれ県外に出ていっても、岩手や葛巻に関わり続けてほしい」と先を見据える。2019年に完成した山村留学生寄宿舎。町外から入学した生徒が生活する