6年半に及んだ使用済み核燃料再処理工場の適合性審査で、日本原燃は何度も追加の安全対策を提示する必要に迫られた。自然災害対策では、冷却塔が国内未確認の秒速100メートルの竜巻に耐えられるように鋼鉄製防護ネットの設置を決めた。こうした重厚な対策を講じるべき設備は数多く、工事の本格実施に必要な詳細設計の認可(設工認)の審査にはかなりの時間を要しそうだ。[br] 2014年開始の審査では序盤に断層を議論した。敷地に最も近いとされる活断層「出戸西方断層」の総延長は当初より5キロ長い約11キロに延長。結果的に耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)を700ガルに引き上げ、耐震対策は量、質ともに増えた。[br] 新基準では、過酷な状況を想定した重大事故の対策を求められた。冷却機能を喪失した状況で、高レベル放射性廃液が沸騰して発生する事象「蒸発乾固」の拡大を防ぐため、廃液を扱う建屋に蒸気を冷やして回収する凝縮器を設置することになった。[br] 竜巻防護を巡っては、原燃が審査終盤に方針を転換。耐震設計の観点で防護ネットの設置が難しい冷却塔1系統の移設を決めた。[br] 再処理工場の安全上重要な施設には1万個を超える設備があり、設工認の審査には少なくとも1年程度要するとみられる。原燃は設工認の審査の効率化に向け、設備を類型化した上で代表例のみを審査会合で議論したい考えだ。[br] 原子力規制委員会の更田豊志委員長も29日の会見で、審査に当たる規制当局の人員が限られている点を踏まえ、「設工認で同様の確認を受けたいものについて、原燃がうまくまとめられるかがポイントだ」と説明。原燃が21年度上期とする完工目標については「チャレンジング(挑戦的)だ」との見方を示した。