【連載・東京五輪「リスタート」】(2)岸本鷹幸(陸上男子400メートル障害)

自宅で愛娘を背中に乗せながら筋力トレーニングに励む岸本鷹幸=6月、東京都内(本人提供) 
自宅で愛娘を背中に乗せながら筋力トレーニングに励む岸本鷹幸=6月、東京都内(本人提供) 
「正直、すごくラッキーだった」。多くのアスリートが、五輪延期に落胆する中、陸上男子400メートル障害の岸本鷹幸(30)=むつ市出身、富士通=は、一人胸をなで下ろしていた。 ロンドン五輪代表だが、ここ数年は納得の結果を出せていなかった。そのた.....
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 「正直、すごくラッキーだった」。多くのアスリートが、五輪延期に落胆する中、陸上男子400メートル障害の岸本鷹幸(30)=むつ市出身、富士通=は、一人胸をなで下ろしていた。[br] ロンドン五輪代表だが、ここ数年は納得の結果を出せていなかった。そのため、五輪出場には今年6月下旬開催予定だった日本選手権で参加標準記録を突破することが必要だった。[br] しかし、延期が決定した3月下旬時点で「満足に走ることすら困難だった」。原因は昨年冬に発症した足底筋膜炎。「選手権出場は危うかった。選手生命を考えるくらい諦めていた」と打ち明ける。[br] 都内在住。五輪延期から程なく、練習拠点の法政大が使用禁止となり、自宅での自主トレーニングが中心となった。ただ、悲観はしていなかった。「性格上、けがをしていても練習してしまう。強制的に練習できない環境になったのは助かったかな」。ハードルは昨秋のレース以降、半年以上目にしていない。「走れさえすれば、目をつぶってでも跳べる」。長年で培った技術には自信があった。[br] 外出自粛期間中は、これまで興味があっても取り組めなかった英語の勉強に着手し、毎日パンを手作りして娘に昼食として食べさせた。「やりたかったことに手を付けられた。子どもの相手もできて、貴重な時間だった」。競技最優先の生活を長く続けてきた分、何気ない、穏やかな時間がうれしかった。[br] ロンドン五輪は予選敗退と悔しい結果だったが、会場の独特の雰囲気は今でも思い出せる。「選手でいる限りは目指すべき場所。大舞台で走る姿を子どもの記憶に残しておきたい」と1年後へ意欲を見せる。[br] 一方で、感染症の収束が見通せない現状から「本当に開催していいのだろうか。結果を出したとしても、素直に喜べないかも知れない」と複雑な心境を吐露。五輪の大舞台が、選手や観衆の熱気と感動が渦巻く最高の場所だと知っているからこそ「“平和の祭典”の本質がぶれてはいないだろうか」。一アスリートとして疑問も感じている。自宅で愛娘を背中に乗せながら筋力トレーニングに励む岸本鷹幸=6月、東京都内(本人提供)