【連載・八戸三社大祭「伝統の原点へ」】第1部(4)地域経済

八戸三社大祭には多くの観光客が訪れ、地域に経済波及効果が生まれている=2019年8月、八戸市中心街
八戸三社大祭には多くの観光客が訪れ、地域に経済波及効果が生まれている=2019年8月、八戸市中心街
「例年であれば、お祭り期間のホテルはほぼ満室状態。そんな“特需”まで今年はなくなってしまった」 新型コロナウイルス感染拡大を受け、八戸市中心街を舞台とした神社行列や山車の運行、展示が取りやめとなる八戸三社大祭。コロナ危機に直面する中心街のホ.....
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 「例年であれば、お祭り期間のホテルはほぼ満室状態。そんな“特需”まで今年はなくなってしまった」[br] 新型コロナウイルス感染拡大を受け、八戸市中心街を舞台とした神社行列や山車の運行、展示が取りやめとなる八戸三社大祭。コロナ危機に直面する中心街のホテル関係者は、青森県南地方最大の祭りの規模縮小に苦悩の色を浮かべる。[br] 三社大祭は今年で発祥300年目を迎える伝統の神事。何よりも祭礼としての意義が大きい一方、八戸のまちは観光産業の成長と共に発展し、祭りと経済は密接な関係にある。2016年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されて以降は注目度が高まり、地域経済にもユネスコ効果が表れた。[br]  ◇      ◇[br] 八戸地域社会研究会(高橋俊行会長)が15年の三社大祭を分析した調査によると、期間中の7月31日~8月4日に記録した96万2800人の入り込み数(おまつり広場を除く)を用いた経済波及効果は、約57億6900万円と試算される。[br] 直近の19年は、後夜祭が始まった03年以降で最多の107万人が来場。1人当たりの消費額などに変化がないと仮定すれば、15年調査を基にした単純計算で、推計約64億円の経済波及効果が生まれたことになる。[br] 十一日町龍組の会長で、青い森信用金庫地域支援室の石橋晃寛上席調査役は「観光産業は宿泊、飲食、サービスだけでなく、交通や食材供給の事業者など多くの業種に関わりがある」と指摘。「今年もあるはずだった観光消費が、ほぼ失われてしまう影響は甚大だ」とし、祭りが地域経済を支えている現状を説明する。[br]  ◇      ◇[br] 一般的に神事や祭礼行事は、集客を第一とした観光ビジネスとは相いれない存在だ。三社大祭も例外ではないが、近年は貴重な観光資源として祭りの歴史的価値に光が当たっている。[br] 今年2月、八戸圏域版DMO(観光地域づくり推進法人)「VISIT(ビジット)はちのへ」の招待で「八戸えんぶり」を視察した英国、フランスのメディア関係者は、民俗芸能としての成り立ちに興味を示した。欧州のインバウンド(訪日外国人客)は文化への関心が高いとされ、日本国内でも伝統に触れる観光の魅力が見直されている。[br] 八戸三社大祭運営委員会の塚原隆市会長は「三社大祭は現代まで続く神事としての価値が高い。そこにスポットを当てることで、神社を目的に訪れる人が増えるのではないか」と提案。神事の保存、継承を大前提に、三社大祭の“原点”である祭礼に新たな視点でアプローチする重要性を説く。八戸三社大祭には多くの観光客が訪れ、地域に経済波及効果が生まれている=2019年8月、八戸市中心街