天鐘(6月19日)

戦国時代の中国地方は群雄割拠。強固な地盤を持つ大名や土豪がひしめき合っていた。これを初めて統一したのが毛利元就である。幼い頃に城を追い出された「乞食(こじき)若殿」は、後に「西国の雄」として君臨する▼家運を懸けた先に覇権があった。故に天下を.....
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 戦国時代の中国地方は群雄割拠。強固な地盤を持つ大名や土豪がひしめき合っていた。これを初めて統一したのが毛利元就である。幼い頃に城を追い出された「乞食(こじき)若殿」は、後に「西国の雄」として君臨する▼家運を懸けた先に覇権があった。故に天下を志向することなく、子の隆元、元春(吉川)、隆景(小早川)に宛てた「三子教訓状」で一族の結束を説く。「武略、計略、調略が肝要」。希代の知将らしい戒めも遺(のこ)した▼愛妻家だった。正室の妙玖(みょうきゅう)とは家督を継ぐ前に契りを結び、戦乱の世で苦楽を共にした。先立たれるまで側室を娶(めと)ることはなかった。生前を偲ぶ手紙は数知れず。教訓状でも母を追善するよう諭した▼同じ安芸国。妻は昨夏の保守分裂の激戦を勝ち抜いて国政へ。程なく夫は7期目で悲願の初入閣を果たす。端から見れば二人三脚による立身出世物語の主人公だった。疑惑の渦中にあった河井夫妻が逮捕された▼周辺の証言が生々しい。差し出した現金は謀略か。国会から姿を消し、説明責任から逃げた。覚悟の身辺整理を思わせるように、自民党を離れる対応は迅速。提供された選挙資金は巨額で使い道が気になる▼「責任を痛感している」。この日も首相の常套(じょうとう)句を聞かされた。逆風が弱まるのを待ち、延命を図ってきたのが長期政権の実体である。疑念に蓋をして国会を閉じた翌日の逮捕劇。政治の劣化が共通する。