天鐘(6月18日)

先日天国に旅立った秋田犬の「わさお」。その訃報に全国から多くのお別れの言葉が寄せられた。愛嬌(あいきょう)のある顔が忘れられず、いまだに“わさおロス”という人も多いかもしれない▼これほど皆に愛された犬もなかろう。映画に出演、写真集も出た。け.....
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 先日天国に旅立った秋田犬の「わさお」。その訃報に全国から多くのお別れの言葉が寄せられた。愛嬌(あいきょう)のある顔が忘れられず、いまだに“わさおロス”という人も多いかもしれない▼これほど皆に愛された犬もなかろう。映画に出演、写真集も出た。けれども、彼にとって最も幸せだったのは、最後まで飼い主たちに見守られて天寿を全うできたことだろう。人間なら90歳以上の大往生である▼元々、迷い犬だった。鯵ケ沢町の海岸でイカ焼き店の菊谷節子さんに拾われる。日々、愛情を注がれ、人気者に。思えば、この偶然の出会いがなければ、一匹の犬の運命は違ったものになっていたかもしれない▼動物愛護法が今月、改正された。犬猫などへの虐待がより厳しく罰せられる。依然なくならない殺処分はだいたいが人間の都合や身勝手だ。自らの行く末をご主人さまにゆだねるしかない物言えぬ動物たちである▼わさおは、またとない飼い主に恵まれた。あの世で最愛の菊谷さんと再会、尻尾を振っている姿が目に浮かぶ。あの独特な笑顔を振りまいて、今ごろまた、周りを幸せな気分にさせているに違いない▼そうそう、一度聞いてみたかった。「ブサかわ」なんて言われて本当はどうだった?。「失礼な。犬の世界じゃ男前だぞ。人間の基準で勝手に決めるなよ」。小さな目で見つめながら、そんな文句の一つも言いたかったかもしれない。