天鐘(6月7日)

歌舞伎の『勧進帳』は人気が高い演目の一つ。謀反の廉(かど)で北へと落ち延びる源義経の一行と関守の攻防を描く。丁々発止の問答、見得(みえ)を多用した様式美、屈指の名曲とされる長唄。物語を貫く義と情に心を打たれる▼幕が引かれた後の「飛び六方」は.....
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 歌舞伎の『勧進帳』は人気が高い演目の一つ。謀反の廉(かど)で北へと落ち延びる源義経の一行と関守の攻防を描く。丁々発止の問答、見得(みえ)を多用した様式美、屈指の名曲とされる長唄。物語を貫く義と情に心を打たれる▼幕が引かれた後の「飛び六方」は最大の見せ場。天と地、東西南北に手足を大きく動かし、弁慶が花道を駆け抜ける。劇場奥の「大向こう」から威勢の良い掛け声が響き、拍手喝采。文字通りに有終の美を飾る▼ほとばしる汗と情熱。ぶつかる気力と意地。奮闘を後押しする激励と歓声。青森県内ではこの土日、高校総合体育大会の盛り上がりが最高潮に達するはずだった。恨めしいほどのスポーツ日和である▼引退か継続か。多くの学校で3年生の決断は割れた。全員がそろって臨む最後の試合は後輩との紅白戦。苦楽を刻んだグラウンドやコートで、いつものようにボールを追った。記念の集合写真は笑顔で。それでも涙が出てきた▼代替大会が開催されなくても、期末考査で出場が叶わなくても、練習を続ける生徒がいる。区切りを探して繰り返す自問自答。納得できる答えは見つかるだろうか▼一部の競技を除いて、集大成の舞台となる代替大会が今月中旬に始まる。関係者の尽力に感謝したい。一方で主役の高校生は「花道」を前に、もしくは背を向けて、様々な感情に揺れている。心に寄り添い“完全燃焼”を見守りたい。