MOX工場22年度上期完成目標「風前のともしび」/核燃サイクルの足かせに

使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)が新規制基準の審査に事実上合格し、操業への手続きが前進する中、セットの施設に位置付けられるMOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料加工工場(同村)の完成時期が不透明だ。事業者の日本原燃が2022年度上.....
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 使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)が新規制基準の審査に事実上合格し、操業への手続きが前進する中、セットの施設に位置付けられるMOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料加工工場(同村)の完成時期が不透明だ。事業者の日本原燃が2022年度上期とする完成目標の実現は、審査の最終盤で足踏みが続き、推進側の行政関係者でさえ「風前のともしび」と厳しい見方を示す。MOX工場の完工遅れは、準国産の燃料製造を意義とする核燃料サイクルの足かせとなりそうだ。[br] 「とても準備が整っている状況とはいえない。明快な回答もなく、われわれとしては消化不良だ」。5月26日のMOX工場の審査会合で、原子力規制庁の審査担当者は眉をひそめた。[br] この日、原燃は火災による設備の損傷防止や重大事故の拡大防止など、一通りの説明を終えるとしていたが準備不足を露呈。牧隆執行役員は「準備自体はしているつもりだったが、レベルが足りなかった」と釈明に追われた。[br] 審査開始から6年超が経過したが、増田尚宏社長は「再処理側と比べ、MOX側の社員の審査経験が足りていない」と説明。審査に事実上合格した再処理工場の担当者も、MOX工場の審査に加わっているというが効果は未知数だ。[br] 審査に合格できても前途は多難だ。原燃が過去に示した両工場の工事期間は、最長で再処理工場が「1、2年程度」に対し、MOX工場は「3年」。再処理工場は既に主要な建屋があるが、2010年に着工したMOX工場はメインとなる燃料加工建屋の建設が残っている。[br] MOX工場は審査の中で新たな対策も必要になった。梁(はり)などの補強工事を実施することで、設備を予定通り配置できなくなったため、建屋の地上部分は一部2階建てから総2階建てに変更。地下階の一部も階高を60センチ高くし、着工時に約1900億円だった建設費は約3900億円へ倍増した。[br] 建設工事の本格着手に必要な認可(設工認)の申請書類は約2万ページに上る見通し。設工認の審査も一定の時間を要すると見られる。[br] MOX工場は、再処理工場で取り出したプルトニウムとウランを軽水炉で燃やすプルサーマル計画を進める上で重要な施設だ。[br] それ以前にプルサーマルを導入する再稼働済みの原発は4基のみで、MOX燃料の消費先は限定的。国の原子力委員会は再処理工場の製造量を制限する方針を示すなど、サイクル施設の存在意義が問われている。[br] 増田社長は5月末の会見で、MOX工場の完成が万一遅れた場合でも、再処理工場の操業に影響はないとの見解を示した。[br] ただ、ある村関係者は、再処理工場の1年後にMOX工場が完成する現在のスケジュールを念頭に「そこが崩れては、プルサーマルの考え方自体が成り立たなくなってしまう」と懸念を示す。