新型コロナウイルス感染の拡大で、3月から臨時休校となった全国の小中高校の授業がようやく再開に向かっている。[br] 休校は最長で3カ月近くに及ぶが、5月半ば以降に全国で緊急事態宣言が順次解除され、一部の地域で既に授業が始まった。感染が再拡大しなければ、6月にはほとんどの学校で段階的に授業が再開できそうだ。[br] だが大半の児童・生徒や保護者、教師はこれほど長期間の休校の経験はなく、学習進度の遅れや大学・高校の入試対策が心配される。コロナ禍による景気低迷から家庭の経済力の差が広がり、子どもらの学力などに影響しないかも気になる。[br] 学校行事や部活動の停止でストレスはたまり、長期の休み明けには不登校などの問題も起きかねない。国や自治体には、子どもや保護者らの不安を解消するとともに格差を埋める取り組みを進め、平等な学習機会を守る方策を講じてもらいたい。[br] 全国の学校の休校は安倍晋三首相による突然の要請を受け、3月初めに始まった。緊急事態宣言が全国に波及すると、小中高校などの約9割が休校する時期もあった。[br] 長い休校の間、学校は子どもたちに宿題を課し、登校日を設けるなどの対応をした。ただ家庭にこもる生活ではリズムが乱れ、勉強に身が入らなくなるのは避けられない。ゲームに熱中し過ぎる恐れや、塾を利用できる家庭環境か否かで学習進度に差がつく懸念もある。[br] 授業の補完策にテレビ会議方式といったオンライン学習の活用も提唱された。ただ家庭に端末機器や通信設備が整わないなどの問題点もあり、同時双方向の学習は十分にできないのが実情。オンライン化が進む私立校と公立校の格差も指摘される。[br] 学校再開に向け、文部科学省は衛生管理手順を全国の教育委員会に送り、各校は分散登校など感染防止対策を取る。対面授業に制約がある中ではオンライン学習の併用は欠かせず、国や自治体は機器の配備、利用方法の研修を急ぐ必要がある。[br] 学習の遅れを取り戻すため夏休みの短縮や土曜授業などが想定される。あまりの詰め込み授業は過剰な負担になる。学校行事も組み込んだ長期的な教育目標を定め、学習に加え集団生活も立て直せるよう指導を工夫してほしい。入試も今まで通りの履修が困難なことを前提に、問題作成や合否判定を望みたい。[br] 学校が再開しても難問が山積する。国などは9月入学論議の前に、現実の課題を解決すべきだ。