天鐘(5月23日)

威容を誇る甲子園球場のスコアボードが電光式に改修されたのは1984年のこと。それまではチーム名や出場選手は、担当の職員が一枚一枚、ペンキで手書きしていた▼高校野球は一日に何試合もある。試合が終われば消す必要があるため、水性の塗料が使われた。.....
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 威容を誇る甲子園球場のスコアボードが電光式に改修されたのは1984年のこと。それまではチーム名や出場選手は、担当の職員が一枚一枚、ペンキで手書きしていた▼高校野球は一日に何試合もある。試合が終われば消す必要があるため、水性の塗料が使われた。雨が降れば選手の名前が流れて読めなくなってしまう。そんな光景にいつもトーナメント戦のはかなさを思ったものである▼予想されていたとはいえ、正式に発表されるとやはり喪失感が大きい。春に続き、夏も中止になってしまった「甲子園」。聖地のあの大きなスコアボードに、今年はついに主役たちの名が刻まれない▼何と声を掛けていいのか正直、分からない。理不尽に目標を奪われてしまった少年たちだ。「きょう一日は泣いてええ」。八戸学院光星監督・仲井宗基さんの言葉を、全ての選手に届けたいと願うのが精いっぱいである▼それでも涙を拭いたら考えてほしい。共に夢を追った仲間や家族のこと。支えがあって野球ができた。無念の夏に簡単に折り合いはつけられまいが、今は日本中が「頑張れ」と声援を送っている▼これからの支えになるのは、厳しい練習に泥んこになって耐えた自信と誇りだろう。それはどんな激しい雨にも消えることはない。当事者でなければそのつらさをちゃんと理解してやれないのは知っている。でも信じたい。雨の後は虹が出ると。