天鐘(5月5日)

「あらゆる生物は自己の成功率を他者よりも高めるために利己的に振る舞う」とは、英国の動物行動学者リチャード・ドーキンスが1976年に発表し、ベストセラーになった『利己的な遺伝子』のキーワードだ▼生物はなぜ生き延びることに必死で、戦い合うのか―.....
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 「あらゆる生物は自己の成功率を他者よりも高めるために利己的に振る舞う」とは、英国の動物行動学者リチャード・ドーキンスが1976年に発表し、ベストセラーになった『利己的な遺伝子』のキーワードだ▼生物はなぜ生き延びることに必死で、戦い合うのか―を遺伝子の視点から追求。「人も微生物も自らの遺伝子を残すため、生存と繁殖に懸命だから」と解答している▼細胞もなく遺伝子だけの新型コロナウイルスの“利己性”は強烈だ。人体に侵入、勝手に遺伝子を複写し体外にまき散らす。狡猾(こうかつ)極まりないが「毒性も感染力も弱く恐るるに足らず」と見事騙(だま)される専門家もいた▼だが、中国から欧米に伝播(でんぱ)すると彼らは本性をむき出しに。B型からC型に変異した欧州株は重症化しやすく死者が続出。3月末、そっと戻った帰国者を介した「第2波」が恐怖のフェーズを一変させている▼断片を繋(つな)ぐと納得がいく。軽症から容体の急変、心筋梗塞や脳梗塞、味覚障害に足指のしもやけと謎の症状が続いている。原因はウイルスが血管を攻撃して生じる血栓(けっせん)の連鎖で、あっと言う間に重症化するらしい▼緊急事態宣言が今月末まで延長され「終息と次に向けた1カ月」を迎える。だが敵は変異を繰り返して進化、2巡目の冬に的を絞っているに違いない。治療薬のめどはついたが、長期戦にはワクチンと一人一人の持久戦略も欠かせない。