安倍晋三首相による公的行事の私物化、さらには公選法違反ではないかとの疑いなどさまざまな疑惑を招いた昨年春の「桜を見る会」からほぼ1年が経過した。[br] 首相主催の桜を見る会は1952年から昨年まで東日本大震災後を除いて毎年開かれ、開催要領によると皇族や国会議員、各国の駐日大使のほか、「各界の代表等」として芸能人やスポーツ選手らが招待されている。[br] 招待客は約1万人が目安とされていたが、昨年4月13日には約1万8千人が出席。公費による支出額も2014年の約3千万円から毎年増え続け、昨年は約5500万円にまで膨れ上がった。昨年11月の臨時国会で、招待者の中に「首相枠」として安倍首相の後援会関係者が約800人も含まれていたことを野党が明らかにし、「公私混同」「税金の目的外使用」との批判が噴出した。[br] さらに、会の前日に都内のホテルで開かれた後援会の「前夜祭」会費が不自然なほど安く、ホテル側からの明細書もないことから、首相事務所が費用を補塡(ほてん)した可能性があるとの疑惑も浮上。野党は「公選法違反だ」と追及している。[br] ほかにも、招待者の中に反社会的勢力の人物らが含まれていたことを野党は問題視。昨年5月には野党議員から資料要求のあった1時間後に内閣府が招待者名簿をシュレッダーで廃棄したことも判明、「証拠隠し」が疑われる事態に至った。[br] 森友、加計学園問題に続き、長期政権のおごりとひずみを象徴していると言わざるを得ない。[br] 政府は今年の桜を見る会の取りやめを決め、名簿廃棄が公文書管理法違反だったことを認めた。一方で、安倍首相は自身に向けられた疑惑を否定するだけで、裏付けとなる根拠も示さず、事実関係を改めて調査する気もさらさらないようだ。[br] 今、日本は新型コロナウイルスという大きな脅威にさらされ、7都府県に緊急事態宣言が出された。多くの国民は「桜を見る会問題どころではない」というのが実感だろう。国会での議論も当然ながら新型コロナに集中している。[br] 首相は、新型コロナに比べればささいなことだと高をくくっているのかもしれない。だが、多くの国民、とりわけ社会的弱者には大きな痛みを伴う緊急事態宣言を発出した政治指導者が公私混同をしているとしたら、不条理の極みだろう。[br] 安倍首相は説明責任をいずれ果たさなくてはならないことを肝に銘じておく必要がある。