時評(4月9日)

新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が停滞、家計収入も減少する中、政府の緊急経済対策がまとまった。「戦後最大の経済危機」とみて、財政投融資や民間資金を含む事業規模は108兆円と、リーマン・ショック時に比べ約2倍の過去最大の対策となる。 し.....
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 新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が停滞、家計収入も減少する中、政府の緊急経済対策がまとまった。「戦後最大の経済危機」とみて、財政投融資や民間資金を含む事業規模は108兆円と、リーマン・ショック時に比べ約2倍の過去最大の対策となる。[br] しかし景気対策で乗り切れた従来の経済危機とは違い、命の脅威に直結する危機だ。医療体制整備に2兆5千億円を計上したが医療上の対応の遅れは否めない。感染抑止こそが最大の経済対策との構えで取り組まなければ、安心は見えてこない。[br] 経済対策の最大の目玉は収入が急減した世帯への現金給付で、自己申告に基づき1世帯当たり最大30万円とする。児童手当も1回限りで1万円追加。与野党から要望が出た全世帯一律給付や消費税減税は見送る。今後具体的な条件や手続きで混乱がないよう求めたい。[br] 幅広く目配りしたのは企業支援だ。収入が半減した個人事業者に最大100万円、中小企業者に同200万円給付するほか、税金や社会保険料の納付を1年間猶予する。資金繰り支援は、無利子融資や特別融資枠などで45兆円に膨らんだ。[br] 雇用を維持する企業向けの雇用調整助成金も拡充した。また感染終息後を見据え、被害の大きい観光、運輸、飲食、イベント業を補助する2兆円の消費刺激策を用意。長期戦に備え1兆5千億円の予備費も創設した。[br] 出口の見えない危機には大胆な資金投入が必要だ。このため総額6兆円の現金支給などに充てる16兆円規模の2020年度補正予算案をまとめた。その財源は全額国債発行で賄う。[br] 国庫は既に借金の山だが、今後も税収の大幅下方修正とともに、国債の追加発行は必至だ。通期では20年度当初予算に計上した32兆円をはるかに超える空前の規模に膨らむ恐れがある。不測の事態への備えを欠いた放漫財政の付けが国民に回れば、新たな経済危機の恐れもある。[br] しかも最大規模の対策を実施しても、生活や経済が立ち直るのは感染抑え込みにめどが立ってからだ。緊急事態宣言による「列島総自粛」のみでは乗り切れまい。対策は、夏にも新型コロナ治療薬としての承認が視野に入るアビガンの備蓄を200万人分に増やすと明記したが、新たな治療薬、ワクチンの開発は最優先だ。検査機器やマスク、人工呼吸器、隔離病床の確保も一刻を争う。政府は、弱点が露呈した感染症に対する包括的安全網の強化策についても国民に周知すべきだ。