天鐘(4月9日)

プロ野球の巨人―阪神といえば伝統の一戦。選手以上に熱いのがファンの応援合戦だ。巨人側から球団歌『闘魂こめて』が流れれば、負けじと阪神の『六甲おろし』が響き渡る▼ライバル同士の相いれない応援歌だが、作ったのはいずれもあの古関裕而さんだ。昭和の.....
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 プロ野球の巨人―阪神といえば伝統の一戦。選手以上に熱いのがファンの応援合戦だ。巨人側から球団歌『闘魂こめて』が流れれば、負けじと阪神の『六甲おろし』が響き渡る▼ライバル同士の相いれない応援歌だが、作ったのはいずれもあの古関裕而さんだ。昭和の時代に幾多の名曲を残した、ご存じ「音楽の鉄人」。この春始まったNHKの朝ドラにその生涯が描かれる▼軍歌、歌謡曲、童謡まで、世に放った曲は約5千。『とんがり帽子』に子供たちが笑い、『君の名は』は銭湯の女湯を空にした。『栄冠は君に輝く』は今に続く青春の象徴。硬軟自在のメロディーはいつも国民のそばにあった▼『長崎の鐘』で戦死者を悼む一方、「マーチ王」とも呼ばれた。大学の応援歌からNHKの『スポーツ行進曲』まで、その実績は圧倒的。戦後日本の街角を吹き抜けた軽やかな音符の風である▼東京五輪の入場曲『オリンピック・マーチ』は最高傑作として名高い。歓喜が弾(はじ)けるリズムに半世紀を経た今も心が躍る。時に優しく、時に勇ましく。音の天才が生み出す数々の旋律は激動の時代を生きた日本人の元気の素だった▼人気の朝ドラの題名は『エール』。思わぬ感染症でこれほど世の中が沈み込むとは、ドラマでよみがえった泉下の作曲家も思ってはいなかったろう。今こそ元気を。あの軽快なマーチと応援歌が再び私たちへのエールになる。