VRで“視野”広げて 障害者支援プログラム、八戸の施設が県内初導入

障害者向けのVR教材を導入した榎本陽さん(右)=13日、八戸市十三日町の「クロスロード」
障害者向けのVR教材を導入した榎本陽さん(右)=13日、八戸市十三日町の「クロスロード」
知的障害や発達障害の子どもたちを支援する八戸市の就労準備型放課後等デイサービス「クロスロード」が、当時者向けに開発された仮想現実(VR)の教育プログラムを導入している。青森県内では初の試みで、当時者が苦労しやすい対人関係や集団行動での適切な.....
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 知的障害や発達障害の子どもたちを支援する八戸市の就労準備型放課後等デイサービス「クロスロード」が、当時者向けに開発された仮想現実(VR)の教育プログラムを導入している。青森県内では初の試みで、当時者が苦労しやすい対人関係や集団行動での適切な対応を効果的に学べるとして、評判も上場だ。施設代表の榎本陽さん(43)は「当事者だけでなく、支援する健常者にとっても気付く点は多い」と、双方の理解が深まる契機として期待を寄せる。[br] VR教材「emou」(エモウ)は、ジョリーグッド(東京)が開発し、2019年4月から販売。学校や面接、職場など100ケースほどの対人状況について、どんな受け答えをすれば良いのかを臨場感を持って学ぶことができ、全国約40カ所の施設や企業で採用されている。[br] クロスロードは同年10月に開設。小学校高学年から高校生までを対象に、各種講習や職業体験を通じた支援を手掛けている。VRは、ソーシャルスキルトレーニングの一環で導入を決めた。[br] VRでは、例えば次のような場面が登場する。同級生の一人から特別にプレゼントをもらった後、別の同級生がそれを見つけ、どうやって入手したのか尋ねてくる。回答の選択肢は(1)親から(2)同級生から(3)拾った―の三つだ。[br] 「プレゼントをくれた同級生をかばうために、大抵は(1)を選ぶと思うんです」と榎本さん。だが、実際にVRを体験した通所者のうち、大半は(2)を選択した。「正直は良いことだと一徹に信じる余り、関係者を傷付けない選択が分からない子がこんなに多いとは」。長年、障害者支援に携わってきた榎本さんにして、初めて気付いた知見だった。[br] 実際にVR講習を数カ月受けた、軽度知的障害の男性(18)も「何でも正直に話すことが、いつも正しいわけではないと分かった」と話す。[br] 榎本さんが通所者の保護者や支援担当の学校教員にVRを紹介した際も、反響は大きかった。「関係者のわれわれでさえそうならば、普段、障害者との接点が少ない雇い主側にも、当事者が社会へ順応するためにどれだけ苦労しているかを分かってもらえるはず」と榎本さん。今後は障害者雇用を望む就労先の関係者にもVRを体験してもらい、実情を知ってもらいたいという。[br] 現教材には改良の余地があるとも感じている。女性の視点でのコンテンツが少ない点だ。「障害のある女性は特に、セクシュアルハラスメントや性的被害の犠牲になる例がままある。その場合、単に方便を使うだけでは、被害を未然に防げなかったり、被害が闇に葬られたりしてしまう」と懸念。多様な状況を想定した教材を通じて、当事者の生き方や生活環境の質が向上することを願っている。[br] 施設利用やVR教材などに関する問い合わせは、クロスロード=電話0178(38)3477=へ。障害者向けのVR教材を導入した榎本陽さん(右)=13日、八戸市十三日町の「クロスロード」