天鐘(3月19日)

板金の世界は奥が深い。求められる形は用途に応じて多種多様。職人が手作業で、機械の力を借りて、匠(たくみ)の技を発揮する。家屋、自動車、電化製品…。意識する場面こそ少ないが、身近で生活を支える存在だ▼板金加工の花形とされるのが「曲げ」。固い金.....
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 板金の世界は奥が深い。求められる形は用途に応じて多種多様。職人が手作業で、機械の力を借りて、匠(たくみ)の技を発揮する。家屋、自動車、電化製品…。意識する場面こそ少ないが、身近で生活を支える存在だ▼板金加工の花形とされるのが「曲げ」。固い金属とはいえ、変形させると伸び縮みが生じる。元に戻ろうとする力も働く。わずかであっても誤差は致命傷。緻密な計算に基づく寸法設定に、確かな技量が問われる▼曲げ加工で見られる金属の引っ張り、その長さを「伸び代」と言う。もともとは専門用語。転じて成長や発展の可能性を意味するようになった。小紙に登場するのは2000年以降。近年定着した新しい言葉である▼“立役者”はサッカー元日本代表の本田圭佑選手だろう。上昇志向をむき出しに「伸び代に限界はない」と言い放つ姿は、世間に強い印象を残した。プロ16年目。新天地のブラジルで挑戦を続ける▼前向きなのだが、楽観的ではない。彼が語る伸び代には含意があった。競技人生は必ずしも順風満帆でなく、挫折の繰り返し。苦境を好機と捉え、反転攻勢に挑む覚悟をにじませた▼人口減、少子高齢化、低賃金、短命。本田流に解釈すれば青森県にも無限の伸び代がある? 現状を憂いているだけでは前進はない。とはいえ急成長や劇的な変化を期待できる時代でもない。上を向いて地道な努力を重ねるしかない。