時評(3月15日)

八戸市第3魚市場荷さばき施設A棟は、3年間の改善計画の最終年となる2019年度、水揚げがわずか383トンに終わりそうだ。計画は市が稼働率アップに向け策定。年間3万1200トンの目標に対し、実績は17年度7・4%、18年度4・9%、19年度1.....
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 八戸市第3魚市場荷さばき施設A棟は、3年間の改善計画の最終年となる2019年度、水揚げがわずか383トンに終わりそうだ。計画は市が稼働率アップに向け策定。年間3万1200トンの目標に対し、実績は17年度7・4%、18年度4・9%、19年度1・2%。特に19年度は漁の遅れもあり不振を極めた。[br] このまま稼働が低迷すれば、整備に費やした補助金5億5千万円の返還を国に迫られる可能性がある。市は20年度中に事後評価と新たな改善計画を策定する方針。計画が国から認められれば運用を続ける構えだ。[br] そもそも現行の計画が現実的だったのか。疑問視する声は少なくない。八戸港でサバ全体の年間の水揚げは17年4万838トン、18年3万8121トン、19年1万7687トン。目標と照らし合わせれば大半をA棟で処理することになるが、船の接岸から水揚げ、搬出までの作業時間などを考えると、とても実態に即しているとは言いがたい。[br] 小林眞市長は稼働率アップの方策として、近年水揚げが増えているイワシの取り扱いを挙げる。大量のうろこの処理が課題になると見込まれ、テストを重ねるなどして判断するとしている。[br] A棟はサバ専用の施設だが、対象魚種の拡大はこれまでも検討されてきた。イワシが妙手というには新鮮味に欠ける感が否めない。また、もともと身の軟らかいイワシが、フィッシュポンプやベルトコンベヤーなどの運搬に耐えられるか懸念されるはずだ。[br] 漁業者の間ではA棟に対し、水揚げの際に魚体がポンプの壁面などにぶつかって軟らかくなり、浜値が下がるとの不満が根強い。稼働率が上がらない要因の一つと言われる。市側は魚体へのダメージを明確に認めていないが、現場では実際にこうした声が出ている。市は不満払拭へ何らかの手だてを講じるべきではないか。[br] A棟は世界で最も厳しい欧州連合(EU)の衛生管理基準に対処する国内唯一の施設として整備されたが、稼働は低迷している。赤字は供用開始以降の12~18年度で計4億1756万円に上り、19年度もマイナスが増えるのは確定している。[br] 市議会などでは「赤字を垂れ流している」と強い批判が噴出している。新たな改善計画が単なる延命策ではなく、実効性を伴った内容であることを切に望む。高度衛生化の理念が漁獲不振にあえぐ「水産・八戸」の再興に結びつかないようでは、市民は納得しないだろう。