青森県南地方の主力農産物・ニンニクに被害を及ぼしている病害虫「イモグサレセンチュウ」の生態について、従来確認されていた地下部の球(果肉)や根だけでなく、葉や茎の地上部にも寄生していることが、県産業技術センター野菜研究所(六戸町)の調査で分かった。地上部寄生の確認は国内初。葉や茎は一般的に、畑へすき込まれることが多く、同研究所は「被害拡大を防ぐため、汚染された株の葉や茎は適正に処分してほしい」と警鐘を鳴らしている。[br] 同病害虫はジャガイモなどを腐敗させる線虫として知られ、ニンニクへの寄生は1984年に県内で初めて確認されて以降、特に近年は被害が徐々に拡大。[br] 県内の農協などは清浄な畑地での栽培を呼び掛けるほか、寄生が疑われるニンニクを乾熱処理して死滅させ、早期出荷するなどの対策を講じているが、畑地の確保に限界がある上、乾熱処理でも完全な死滅が困難で、対応に苦慮している。[br] 同研究所はこれまで地下部を対象に寄生状況を調査してきたが、同病害虫と同属で、タマネギに寄生するナミクキセンチュウが、地下部に侵入後、地上部の茎や葉へも移動することを解明した海外の研究論文に注目。2018年10月にイモグサレセンチュウの汚染畑地へニンニク株を植え付けた後、19年6月の収穫までに計3回、サンプル株を採取し、各部位の寄生を調べた。[br] その結果、収穫期が近づくにつれ、特に地下部から葉の部分への寄生数が増えたほか、茎の最上部で、種となる珠芽を内包する総苞へも寄生することが判明。ニンニクでも地下部から侵入し、地上部まで寄生範囲を拡大させることを初めて確認した。[br] 調査を担当した同研究所病虫部の青山理絵研究員は「汚染された地上部の処理を誤ると、寄生範囲の拡大や汚染濃度の上昇につながりかねない」と指摘。注意事項として▽汚染株の珠芽を種子増殖に使わない▽畑地での作業は汚染エリアを後に回す▽汚染株の地上部は、ニンニク畑地以外へ埋める―などの対応を訴えている。