【貨物船沈没】周辺の船、闇夜の現場へ 必死の救助「何とか助けたい」

毛布を被った状態で救助された漁船からストレッチャーに移される男性(右)=1日午前2時25分ごろ、八戸市第3魚市場付近
毛布を被った状態で救助された漁船からストレッチャーに移される男性(右)=1日午前2時25分ごろ、八戸市第3魚市場付近
うねる暗闇を照らすサーチライト。助けを求める貨物船の乗組員―。29日深夜に六ケ所沖で発生し、13人が行方不明となった貨物船と漁船の衝突事故。貨物船の外国人の救出に当たった八戸機船漁協所属の2隻の乗組員が、救出時の様子を語った。波しぶきに負け.....
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 うねる暗闇を照らすサーチライト。助けを求める貨物船の乗組員―。29日深夜に六ケ所沖で発生し、13人が行方不明となった貨物船と漁船の衝突事故。貨物船の外国人の救出に当たった八戸機船漁協所属の2隻の乗組員が、救出時の様子を語った。波しぶきに負けず、助けを求める声や救命胴衣のライトを頼りにベトナム人男性を引き揚げたという。「何とか助けたい」。現場の緊迫した状況からは、船員の必死さがにじみ出た。[br] 同日午後10時ごろ、津軽海峡での漁を終え八戸港に向かう4隻のトロール船。そのうち、「第25興富丸」で仮眠を取っていた、操船を担う船長の佐々木仁徳さん(34)が警報にたたき起こされた。まさかの衝突事故。漁労長の「探せ」との指示を受け、現場とおぼしき海域に向かった。[br] レーダー上で左に弧を描く貨物船の航路が約20分後、いきなり画面から消えた。沈没だ。佐々木さんは操舵(そうだ)室の扉を開けて舵を取った。油の臭いが漂うしけの海に、「おーい」と叫ぶ声を聞き逃さなかった。[br] 近くにいた「第35興富丸」も、点滅する救命胴衣を着てドラム缶のような物に捕まっている男性を発見した。ロープにつないだ浮輪を投げて、船に引き寄せた。しかし、男性は冷たい海に体力を奪われ、甲板に上がれない。乗組員は、今度は網を使い6人掛かりで引き揚げた。[br] そのうちの1人で甲板員の柏崎絋司さん(39)は、男性の様子について「体が冷えきって、パニックで声を上げていた」と振り返った。海水を飲んだせいか、何度か嘔吐(おうと)もしたという。着替えさせてヒーターで温めるなどし、1~2時間して会話ができるまで回復した。[br] 男性は英語が少し話せるようで「温かい水が飲みたい」「あばら骨をぶつけた」「脚が痛い」などと漏らしていた。[br] 「助けられたのは自分だけか」との問いに乗組員が「そうだ。他のクルーは分からない」と正直に答えると、男性は目頭を押さえたという。[br] 第35興富丸はそのまま八戸港に向かい、1日未明に着岸。男性は救急車で病院に運ばれた。一方、第25興富丸と僚船の「第8正進丸」は引き続き現場海域を捜索。しかし、ほかの行方不明者の発見には至らず、同日中に帰港した。[br] 柏崎さんは「全力を尽くした。全員助けたい一心だった」と振り返り、佐々木さんは「(貨物船の)救命ボートを回収したが、人は乗っていなかった」と複雑な表情だった。毛布を被った状態で救助された漁船からストレッチャーに移される男性(右)=1日午前2時25分ごろ、八戸市第3魚市場付近