【刻む記憶~東日本大震災10年】階上漁協女性部 新商品開発、海の魅力発信

「階上の元気は海から」。揺るがない信条を胸に仕事に励む荒谷恵子さん=2月中旬、階上町 
「階上の元気は海から」。揺るがない信条を胸に仕事に励む荒谷恵子さん=2月中旬、階上町 
「いらっしゃい、ゆっくり見ていって」。階上町の「はしかみハマの駅あるでぃ~ば」。新鮮な魚介類が並ぶ店内で、階上漁協女性部長の荒谷恵子さん(73)が声を響かせていた。同施設がある大蛇地区は、東日本大震災で漁港や加工施設が損壊した町内最大の被災.....
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 「いらっしゃい、ゆっくり見ていって」。階上町の「はしかみハマの駅あるでぃ~ば」。新鮮な魚介類が並ぶ店内で、階上漁協女性部長の荒谷恵子さん(73)が声を響かせていた。同施設がある大蛇地区は、東日本大震災で漁港や加工施設が損壊した町内最大の被災地。震災後にできた、この場から町の魅力を発信しようと、女性部のメンバーは地元食材を使った商品開発や販売に奔走してきた。「階上の元気は海から。それを信じて進むだけ」。荒谷さんの信条は揺るがない。[br][br] 女性部は1986年に結成された。地元産の海産物に親しんでもらう「魚食文化」の普及のほか、塩蔵わかめや塩ウニなどの加工品開発、町内の道の駅で商品販売などを手掛ける。イベント時に提供するウニとアワビ入りの郷土料理「いちご煮」が人気を集めるなど、階上の海の魅力を町内外に伝えてきた。[br][br] 10年前の“あの日”、荒谷さんは八戸市内で大きな揺れを感じた。急いで階上に戻ったが、見えたのは黒く大きな津波が沿岸部を襲う瞬間だった。特産のウニは陸に打ち上げられ、商品を加工していた施設は壊滅状態。保存していたフノリもすべてだめになった。[br][br] しばらくは海を見るのが怖かった。海水はにごり、泥が交じったような独特なにおいが鼻を突いた。ただ、諦めたくはなかった。結婚を機に階上で暮らし始め、海からいつも元気をもらってきた。大好きな風景を取り戻すため、すぐに町や漁協に支援を求めた。その年の12月には新たに整備された施設で加工の再開にこぎ着けた。[br][br] 震災から数年がたち、塩ウニの製造過程で副産物として発生するウニのエキス「かぜ水」を商品化するなど、活動が再び軌道に乗り始めたころ、あるでぃ~ばへの出店が決まった。復興事業の一環として2018年5月に開設される新施設への参加は「震災のショックから完全に立ち直るチャンス」に思えた。[br][br] 同施設はオープンすると町内外の客でにぎわった。3周年を前にした21年2月、来場者が70万人を突破し、町の復興のシンボルとなった。看板商品は地元の取れたての魚介類と、女性部が試行錯誤を重ねて生み出した、フノリを混ぜ込んだドーナツやワカメ塩のパウダーを振りかけたソフトクリームだ。[br][br] 困難に立ち向かったハマの女性たちの意気込みは、同施設の一角に構える売店の店名にも表されている。「あっぱぁかっちゃあ,ズ」。母親を意味する方言の「あっぱ」や「かっちゃ」と、ボクシングの「アッパーカット」を掛け合わせ、女性の力強さを表現した。[br][br] きょうも荒谷さんのせわしない一日が始まる。「海に元気がないと、階上は元気にならない。まだまだやることはいっぱいだよ」「階上の元気は海から」。揺るがない信条を胸に仕事に励む荒谷恵子さん=2月中旬、階上町