国が再生可能エネルギーの柱に据える洋上風力発電を巡り、久慈市は同市沖での導入に向けた動きを加速している。本年度はゾーニングマップをまとめ、候補地となる海域を沖合15~20キロの水深110メートル以深を軸に絞り込んだほか、総額3億円に上る国事業の採択を受け、採算性などの本格調査に着手した。最短で2030年度に民間企業が事業化するスケジュールを描き、受け入れ環境を整えるため、国の促進区域指定を目指した取り組みにも本腰を入れる構えだ。[br][br] 市は18年度、関係者や有識者で構成する洋上風力発電ゾーニング協議会を立ち上げ、本年度まで基礎調査を実施。自然景観や生態系への影響、漁業者の漁の状況などから、導入の可能性があるエリアを探った。[br][br] 基礎調査では風車について、海底に固定する着床式ではなく、海に浮かべる浮体式を想定。浮体式は海底がどんなに深くても設置できることから、強い風が吹き、発電のための気象条件に優れる沖合の水深110メートル以深を軸に、水深70~90メートルを加えた二つの海域を候補に設定した。[br][br] さらに市は本年度から環境省の委託事業として、この二つの海域の本格調査を進める。23年度までの4年間をかけて風の状況や生態、地形、潮流、波高などを詳しく調べるほか、採算性や二酸化炭素削減効果を検証し、事業化の判断に必要なデータを収集する。[br][br] こうした動きを民間企業も注視する。市の意向調査によると、洋上風力発電の実績や計画がある9社のうち、7社が国の促進区域指定を前提に「参入に興味がある」と回答した。[br][br] 促進区域は都道府県からの要望に基づき国が指定している。公募で決まる民間企業に最大30年間の占有を認め、企業の進出をしやすくする。市は調査で発電に適した自然条件を示すとともに、地元の機運を高めて指定につなげる考えだ。[br][br] 導入を巡っては、漁業者の合意が壁となるケースが目立つが、市は意見交換を重ね、漁業者を交えた秋田県への先進地視察も実施。風車の基礎部分に魚が集まる魚礁効果を期待する声もあり、現段階で目立った反対意見はない。[br][br] 一方、これまでの促進区域は着床式が主体で、知見の少ない浮体式は未知の部分が大きい。久慈市の場合、かねて脆弱(ぜいじゃく)性が指摘されていた送電網の確保も課題となりそうだ。[br][br] 実現すれば数千億円の事業規模となり、将来的に維持管理業務などは地元で受注できるとの期待もある。遠藤譲一市長は「市に大きな経済効果があり、ぜひとも実現させたい。県や国と連携し、2、3年以内に促進区域指定のめどを付けたい」と積極姿勢を打ち出している。