【北奥羽のクマ事情】(2)本来、警戒心強く利口

食いしん坊で怪力。でもどこか憎めないツキノワグマ=2020年8月、秋田県鹿角市十和田大湯の熊取平
私がクマに興味を持ったのは『山で熊に会う方法』(山と渓谷社刊)を読んだのがきっかけでした。クマの生態を詳細に伝える名著だと思います。 著者は日本のクマ研究の第一人者で、十和田市出身の米田一彦さん。秋田大から秋田県庁へ入庁し、生活環境部自然保.....
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私がクマに興味を持ったのは『山で熊に会う方法』(山と渓谷社刊)を読んだのがきっかけでした。クマの生態を詳細に伝える名著だと思います。 著者は日本のクマ研究の第一人者で、十和田市出身の米田一彦さん。秋田大から秋田県庁へ入庁し、生活環境部自然保護課に勤務。太平山でクマを調査するうちに興味を持ち、フリーのクマ研究家となりました。現在はNPO法人日本ツキノワグマ研究所理事長を務めています。ホームページ=https://ha3.seikyou.ne.jp/home/kmaita/=もぜひ見てください。 また、仙台市出身の直木賞作家熊谷達也さんの『相剋の森』など、マタギ小説からも影響を受けました。 これらを読むと、クマはかなり利口で警戒心が強く、本来は山深く暮らしている動物であることが分かります。しかし、近年は活動領域を人里近くまで広げています。 これは、本来すんでいた森林が開発されたのも原因の一つでしょう。また狩猟に携わる人が減少し、人間からの圧力が弱まっていることも大きいと思います。里山の利用が低下したり、農地が放棄されたりすると、意外にも人里近い山際でひっそりと暮らすのです。 そして、人間の領域にはクリ、トウモロコシの他、モモ、リンゴなどの果樹という、クマにとって魅力的な食物が数多くあります。これらにつられ、人前に現れます。気に入った食べ物などがあれば、繰り返しやって来て、果樹園やキャンプ場のゴミ箱を荒らす被害もあります。 それでも、人の姿を見ると逃げるのが、クマ本来の姿でした。しかし、近年は狩りなどを知らなくなったためか、人を怖がらず堂々と出て来ます。 一方、山菜採りがクマの活動領域に入り、ばったり合ってしまうとクマは反撃するしかなく、そこで事故が起こります。 また入山者のリュックにおにぎりが入っていると、かぎつけて近づいて来るという話も聞きます。賢くて食いしん坊。時には怪力で暴れる。でも、どこか憎めないのがクマという動物です。