「今後、税収が減る中で、ますます(市からの)“基準外”の繰り入れに厳しい目が向けられるのは承知している」 本年度、十和田市立中央病院の事業管理者に就任した丹野弘晃氏(66)は、厳しい表情で経営再建に向けた決意を語った。[br][br] 慢性的な経営難に陥った同病院は2010年度、事業管理者に独立した権限を与え、経営再建を図る地方公営企業法の全部適応に経営形態を移行。新市が誕生した05年度以降、市の一般会計からは、基準内外合わせて212億円の繰り入れが行われているが、今も厳しい状況は変わらない。[br][br] 病院事業会計の19年度決算は6億2360万円の純損失で、累積欠損金は130億円に膨らんだ。さらに20年度は新型コロナウイルス患者の受け入れによって医業収入が減少しており、追い打ちを掛ける。[br][br] ◆ ◆[br] 公立病院には国の基準に基づき、不採算部門などへの必要経費として、自治体の一般会計から繰り入れが行われる。同病院の場合、直近の過去5年間では約11億円が市の一般会計から繰り入れられているほか、06年度以降、基準外の操り入れも継続的に行われている。多額の不良債務の解消や新病院建設時の企業債元金、支払利息の補塡(ほてん)で、19年度までの基準外の合計は65億円に上る。[br][br] 市は財政基盤の安定化を図り、財政調整基金を積み上げてきた。16年度には59億円になり、その後は老朽化した公共施設の再編などに伴う切り崩しや、本年度の新型コロナ対策で34億円(20年12月見込み)に減った。[br][br] 12年前に比べ、当時の3倍の残高だが、今後の人口減による税収の落ち込みは避けられず、病院事業は将来の財政を圧迫しかねない。多額の税金が注がれる現状に、ある市議は「普通の病院なら、とっくにつぶれている。公立病院でも成功事例はある。市からいつまでも基準外の“仕送り”は続けられない」と厳しい。[br][br] ◆ ◆[br] 病院側も対策を講じているが、今後も十数年続く億単位の起債償還や全国的な医師不足から、経常黒字化への道筋は見えてこない。当面の目標も実質単年度資金の黒字化に軸足を置く。[br][br] 一方で、活路を見いだす一手と期待するのが、21年度に三沢市立三沢病院と設立する地域医療連携推進法人だ。連携による医薬品の共同購入や高額機器の効率的な更新により、経費削減が期待できるとしている。[br][br] 丹野管理者は「三沢との連携体制を編成する中で、規模に合ったダウンサイジング(病床削減)は必須になるだろう」と語る。[br][br] 地域に必要な医療が“お荷物”と捉えられ、切り捨てられる事態は避けなければならない。病院側の努力は不可欠だが、開設者として税金を繰り出す市側も当事者意識を持つよう、市民の厳しい視線が向けられている。[br][br] ………………[br] 17日告示、24日投開票の十和田市長選まで1週間を切った。12年ぶりに見込まれる選挙戦を前に、市政の重要課題を探る。