シラカバ林消滅の恐れ/久慈の平庭高原 目立つ老木、更新進まず

白い幹と緑のコントラストが鮮やかな平庭高原のシラカバ林。久慈市を代表する観光資源だが存続に黄色信号がともっている=昨年6月、同市山形町
白い幹と緑のコントラストが鮮やかな平庭高原のシラカバ林。久慈市を代表する観光資源だが存続に黄色信号がともっている=昨年6月、同市山形町
久慈市山形町の平庭高原で、本数や面積で日本一を誇るシラカバ林の存続に黄信号がともっている。寿命が近づく樹齢50~80年の老木が目立つが、シラカバは自然のままでの生え替わりが難しく、後継となる若い木が育っていない。何も手を打たなければ数十年後.....
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 久慈市山形町の平庭高原で、本数や面積で日本一を誇るシラカバ林の存続に黄信号がともっている。寿命が近づく樹齢50~80年の老木が目立つが、シラカバは自然のままでの生え替わりが難しく、後継となる若い木が育っていない。何も手を打たなければ数十年後にシラカバ林が消滅する可能性が高く、危機感を募らせた市は2021年度から対策に乗り出す方針だ。[br][br] 平庭高原のシラカバ林は推計で面積400ヘクタール、本数は30万本に上る。戦前から戦後にかけ、木炭製造などのためにナラやブナが伐採され、牛や馬の放牧地となっていた草地や山林に形成されたとされる。[br][br] シラカバ研究の第一人者として知られる森林総合研究所東北支所(盛岡市)の梶本卓也所長によると、シラカバは大規模伐採や山火事の後に最初に増える先駆樹種で、長くても100年程度と寿命が短い。[br][br] 種子で繁殖するが、日当たりが良く裸地化した条件でのみ成長し、昔に比べて牛馬の放牧や火入れが減った現在は更新が期待できない。このまま人が手を加えず自然に任せた場合、将来的にミズナラやブナの林に代わるという。[br][br] 地元では数年前からボランティアを中心に植樹が行われていたが、本格的な対策には至っていなかった。市は昨年12月、市役所で梶本所長らを講師に招いた勉強会を開催。各部署から集まった職員約30人が打開策を探った。[br][br] 梶本所長らは老齢化したシラカバの伐採、地表の刈り払いやかき起こしの必要性を指摘。長期にわたる保全活動に向けた予算確保、関係機関や住民の機運醸成が欠かせないとし、「息の長い取り組みが求められる」と呼び掛けた。[br][br] 一方、これだけ広大なシラカバ林の再生は全国的にも例がない上、現地調査やモニタリングを通じて管理手法を確立しなければならず、課題も多い。さらに岩手県立自然公園内で大半が私有地のため、県や地権者との調整も必要となる。[br][br] 景観が良い国道281号沿いでは特に老齢化が進み、100年以上が経過したとみられる枯死木も目立つ。台風や大雪での倒木リスクも懸念される。[br][br] 遠藤譲一市長は「シラカバあっての平庭高原。これまでの取り組みでは到底追いつかず、大きな事業で計画的に進めなければ目的を果たせない」と強調。まずは実態把握に向けた調査に着手する考えだ。白い幹と緑のコントラストが鮮やかな平庭高原のシラカバ林。久慈市を代表する観光資源だが存続に黄色信号がともっている=昨年6月、同市山形町