通夜と葬式、参列するのはどっち? 故人と最後のお別れをするために参列する通夜や葬式だが、どちらに参列するか北奥羽地方で対応が分かれている。「地元ではずっと葬式に参列していたのに、隣町に引っ越したら通夜に参列することになって驚いた」という経験をした人も。なぜ地域ごとに異なるのか、葬儀関係者などに取材し、探ってみた。[br][br] 本紙が通夜と葬式のどちらに参列するか、青森県南、岩手県北の両地方で地域住民や役場関係者などに聞いたところ、八戸市や階上町、岩手県北では「葬式」が多数を占めた。一方、八戸近隣の五戸町や南部町、新郷村では、自治体の中でも地区ごとに異なり、「葬式」と「通夜」が混在。一方、三戸町や田子町、上十三地域、下北地域は「通夜」が多かった。[br][br] いずれの地域も正午前後に火葬を行い、同日中の通夜を経て、翌日に葬式を執り行う流れは同じ。[br][br] ただ、通夜の開始時間に関しては違いがあり、八戸市が火葬終了後の「日中」で、ほかの地域は午後6時ごろからの「夜」というのが一般的だった。[br][br] 取材を進めていくと、この通夜の開始時間が、通夜に参列するか、葬式に参列するかの分かれ目になっていることが浮かび上がってきた。[br][br] 青森県内の複数の葬儀関係者によると、数十年前までは、全国どの地域でも、葬式に参列するのが一般的で、通夜も夜に開かれるのが多かった。[br][br] ただ、近年は、仕事の都合などライフスタイルの変化により、主に日中に執り行われる葬式には参列できない―といった人が増加。代わりに夜の通夜に参列するケースが広がり、上十三や下北地方などでは、次第にそれがスタンダードになったとみられるという。[br][br] 一方、八戸市や岩手県北では依然、葬式に参列する従来の慣習が根強く存在。近親者のみが参加することの多い通夜は、出席者が火葬とほぼ重なるため、待ち時間短縮などの理由で、徐々に開始時刻が「日中」に“前倒し”されてきたという。[br][br] ライフスタイルの変化にもかかわらず、八戸市や岩手県北の住民が従来通り、葬式での参列を堅持していることについて、ある市内の業者は「はっきりとしたことは分からないが、これまでの形式を重んじる文化があるのだろう」と推測する。[br][br] ちなみに、全国的に見れば「通夜」に参列し、故人をしのぶ例が多く、八戸市や岩手県北は全国でも珍しいケースのようだ。[br][br] さらに全国的には通夜、葬式(告別式)、火葬の順で行い、日程も短縮化が進む傾向にあるが、北奥羽地方では「初七日(しょなのか)」ごろに葬式を行う風習があるため、亡きがらの傷みを考慮し、火葬が最初に行われているという。