【超高齢社会の先へ】第5部 未来を見つめて(3)

八戸市社会福祉協議会の監督人(左)と書類や通帳の確認をする石田忠男さん。「市民後見人の活動をたくさんの人に知ってもらいたい」と思いを強くする=21日、八戸市
八戸市社会福祉協議会の監督人(左)と書類や通帳の確認をする石田忠男さん。「市民後見人の活動をたくさんの人に知ってもらいたい」と思いを強くする=21日、八戸市
少子高齢化や核家族化の進行で、身近に頼れる親族がいない高齢者の財産や権利を守る「成年後見制度」のニーズが高まっている。相談が増え続ける一方で、弁護士や司法書士ら「専門職後見人」の不足が懸念されており、新たな担い手として一般市民から選任する「.....
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 少子高齢化や核家族化の進行で、身近に頼れる親族がいない高齢者の財産や権利を守る「成年後見制度」のニーズが高まっている。相談が増え続ける一方で、弁護士や司法書士ら「専門職後見人」の不足が懸念されており、新たな担い手として一般市民から選任する「市民後見人」が注目されている。[br][br]   ◇    ◇[br][br] 親族でもなく専門職でもない市民後見人には、単なる受け皿不足の解消にとどまらず、市民目線で被後見人の意思を丁寧に把握し、地域に根ざした活動に結び付けることも期待される。[br][br] 市民後見人として活動するにはまず、自治体が実施する養成研修を修了し、市民後見人候補者として名簿登録をされる必要がある。その上で、家庭裁判所から後見人に選任され、被後見人の財産管理のほか、医療福祉サービスの支払いや契約手続きなどを行うことになる。[br][br] 八戸市で養成を開始した2011年以降、市民後見人の支援を受けた被後見人は13人(20年11月現在)。市が市社会福祉協議会に委託して設置する「市成年後見センター」が窓口となり、フォローアップ研修などを通して、後見人の活動をサポートする。[br][br]   ◇   ◇ [br][br] 「血のつながりがなくても、担当する被後見人が自分らしい人生を送る手助けができたら」。市民後見人の石田忠男さん(69)=同市=は活動への思いを語る。11年に定年退職したのを機に社会貢献活動をしたいと考え、約50時間にわたる養成研修を受講。後見事務に必要な知識や技術を学び、12年に市民後見人候補者として名簿登録された。[br][br] 市民後見人としての初仕事は15年。担当することになった80代の男性は独居世帯で子どもがなく、体のまひや認知症の症状があり、市内の病院で入院生活を送っていた。石田さんは監督人となる市社協の職員に確認しながら財産目録を作成し、毎月の入院費用の支払いや各種手続きを代行。それだけでなく、定期的に病室を訪れて声を掛けたり、時には握手をしたりするなどして、できる限り男性に寄り添ったという。[br][br] ところが約半年後、男性の病状が急変。程なくして男性は亡くなった。石田さんは関係機関に連絡を取りながら、みとる親族がいない男性を思い、心を痛めると同時に後見人の責任の大きさを感じた。「担当した被後見人が『この世に生まれて良かった』と思えるように、親身に関わっていくように心掛けている」と石田さん。この経験が今の活動の糧となっている。[br][br] 多くの人に成年後見制度や市民後見人の活動への関心を高めてほしいとの思いから、石田さんら市民後見人は有志で「はちのへ市民後見人連絡会」を12年に設立。市民後見人同士の情報交換や出前講座を通して普及啓発に取り組む。石田さんは「制度をたくさんの人に知ってもらい、困っている人の助けになれば」と思いを強くする。これからも“人生の伴走者”として後見人活動を続けていく。八戸市社会福祉協議会の監督人(左)と書類や通帳の確認をする石田忠男さん。「市民後見人の活動をたくさんの人に知ってもらいたい」と思いを強くする=21日、八戸市