天鐘(11月29日)

♪かきねのかきねのまがりかどたきびだたきびだおちばたき―。木枯らしが銀杏(いちょう)や欅(けやき)の落ち葉を運んで来る頃、何気なく口ずさんでいる童謡『たきび』。晩秋から初冬にかけての風物詩であったが、消え去って久しい▼2番が「さざんか」、3.....
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 ♪かきねのかきねのまがりかどたきびだたきびだおちばたき―。木枯らしが銀杏(いちょう)や欅(けやき)の落ち葉を運んで来る頃、何気なく口ずさんでいる童謡『たきび』。晩秋から初冬にかけての風物詩であったが、消え去って久しい▼2番が「さざんか」、3番が「こがらし」のリフレインだ。素朴な言葉の繰り返しが叙情をかき立てる。吹きだまった落ち葉をたいてフーフー焼き芋でも頰張れば…▼情景は晩秋の北国とばかり思い込んでいたが、山茶花(さざんか)は寒さに弱く九州や四国が北限。冬を告げる木枯らしも、気象庁が1号を春一番の対義として東京と近畿の“地域限定”で発表しているだけで、東北ではなし▼なのに北国を彷彿(ほうふつ)させるのはなぜか? 作詞した巽聖歌(たつみ・せいか、本名は野村七蔵)は岩手県紫波郡日詰町(現紫波町)の出身。鍛冶屋の末っ子に生まれ18歳で上京、時事新報で雑誌の編集をしながら作品も発表した▼童話が北原白秋に絶賛され、童話作家や詩人、歌人として活躍。1941(昭和16)年、NHKの依頼で『たきび』を書いた。歌詞に惚ほれ込んだ作曲家の渡辺茂が、口ずさみながらわずか10分で曲を仕上げたという▼消防法などで街の焚き火は禁止され今や懐かしの風物詩だが、口ずさめる歌は残る。北国は「きたかぜぴいぷう」から一夜明けたら、“北風小僧”が雪と寒気を連れて「びゅーびゅー」やって来た。辛く厳しい冬になりそうだ。