新型コロナウイルス感染拡大の影響で奇妙な夢や悪夢を見る人が増えている?―。岩手大人文社会科学部の松岡和生教授(認知心理学)が、岩手県内と関東地方の学生を対象に、コロナ禍に見る夢に関する調査を進めている。自粛生活や先が見えない不安によるストレス増加が、睡眠の質と夢の内容に影響を与えている可能性が高いとし、「コロナ禍が長引くほど、不快な夢を見る人が増えると考えられる」と指摘する。[br] 夢は、睡眠中の脳が生活の中で起きた出来事や見聞きした情報、感情を整理する過程でストーリーとなって現れるといわれる。[br] コロナ禍による悪い夢を見る人の増加はこれまで、米国や欧州の研究者が報告。今まで想起しなかった皮膚感覚や嗅覚、触覚が伴う奇妙な夢、病気感染や死に関する悪夢などを見る人が増えているという。[br] 松岡教授は東洋大の教授と共同で今年春と夏の2回、新型コロナ感染者が多い関東地方の学生と、ゼロ(調査時)の岩手県内に住む学生計800人を対象に、夢の内容や苦痛度などを調査した。[br] その結果、緊急事態宣言が発令される前後だった春は、関東の学生が嫌な夢を見る傾向が多かったが、夏は岩手の学生に不快な夢が増加。松岡教授は「夏は岩手のみ感染者が出ていない状況が続き、県内が緊張状態にあったのが一因では」と分析する。[br] 嫌な夢と精神状態は必ずしも直結している訳ではないとしつつ、「自分が気付かない心身の不調を訴えている場合もある。最近の行動を振り返り、改善できることがないか自身の心に耳を傾けるのに役立ててほしい」と強調。日中になるべく気持ちよく過ごしたり、寝る前に前向きなことを考えたりすると、夢見が良くなる可能性が高いという。[br] 松岡教授らは今後、収集データを基に、感染者数や自粛の程度による地域差などを詳しく分析する予定だという。