八戸高専が授業動画の多言語化に着手

多言語化された授業動画のサンプル。音声のほか、字幕も複数の言語から選択できる(八戸高専提供)
多言語化された授業動画のサンプル。音声のほか、字幕も複数の言語から選択できる(八戸高専提供)
八戸高専が8月末から、新型コロナウイルス対策で作成した遠隔授業用動画の多言語化を進めている。音声を自動で翻訳する既存の字幕作成ソフトを手作業で改良し、英語やアジア各国の言語で字幕と音声を付ける。全国の高専では初の試みで、コロナ禍における窮余.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
八戸高専が8月末から、新型コロナウイルス対策で作成した遠隔授業用動画の多言語化を進めている。音声を自動で翻訳する既存の字幕作成ソフトを手作業で改良し、英語やアジア各国の言語で字幕と音声を付ける。全国の高専では初の試みで、コロナ禍における窮余の策だった動画を逆に活用し、教育内容の充実や自動翻訳プログラムの研究に取り組み、学校の魅力向上につなげる考えだ。[br] 同校は感染の第1波が青森県内にも広がりつつあった3月下旬、全国の高専では最初期に動画での遠隔授業を決定。4月下旬から、対面授業が再開した6月上旬までの全ての授業について、教員が実写やパワーポイントの座学用動画を用意した。6週間で約2千コマ分を作った。[br] 動画には全て教員が日本語音声を付けたが、一部から「人工知能(AI)で字幕が自動で付けられるのでは」との声が上がった。自動字幕は最近のテレビ番組や動画投稿サイトでも広く採用されており、正確な日本語字幕があれば、英語や留学生の出身国であるアジア諸国の言語も訳出できることから、この取り組みを模索した。[br] ただ、既存の翻訳ソフトを導入してみると、専門用語の多い授業では誤訳が頻発した。そこで、コロナの影響で今年のインターンシップが中止となった学生や、アルバイトの機会を失った留学生に、自動字幕の修正を有償で依頼することを考案。正確な字幕がまとまった後は、音声を手作業で吹き込む予定だ。[br] 同校の圓山重直校長は前職の東北大教員だった約20年前、遠隔授業の推進に携わった経験がある。「当時はインフラ環境やニーズが不足していたが、コロナを機に風向きが一気に変わった」と指摘。「多言語の授業動画は留学生だけでなく、日本人学生にも実践的な各国言語を身に付ける好機となる。ほかの高専と連携すれば、多言語動画の増加や訳出作業の迅速化につながり、国際的な専門教育の有力なコンテンツになり得る」と強調する。[br] 遠隔授業の実施によるもう一つの貴重なデータが、教員や授業を受けた学生の声だ。[br] 授業動画は分からない部分を何度も見返すことができる半面、対面のようなマンツーマン指導が難しい。学生アンケートでは、下の学年ほど遠隔授業の評価が低かったという。圓山校長は「授業動画は受動的な勉強方法を脱し、自学自習の姿勢を身に付けるほど効果を発揮するという証しだ。授業動画が本格的に活用されれば、対面授業の在り方も徐々に変化することになるだろう」と分析する。[br] 多言語化事業を統括する長谷川章副校長は「動画の作成には多大な労力を要したが、こういう形で利活用できるとは思ってもいなかった。八戸高専で学ぶ意義が高まり、大きな魅力になる」と今後の効果に期待を寄せる。多言語化された授業動画のサンプル。音声のほか、字幕も複数の言語から選択できる(八戸高専提供)