田中俊一氏インタビュー 原子力規制委員会初代委員長/「経済性なしで安全確保難しい」原燃に指摘

インタビューに応じる田中俊一氏=7日、福島県飯舘村
インタビューに応じる田中俊一氏=7日、福島県飯舘村
2017年9月まで5年間、原子力規制委員会の初代委員長を務めた田中俊一氏(75)が11日までに、福島県飯舘村で本紙のインタビューに応じた。在任中、審査に携わった使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)の正式合格が間近に迫る中、田中氏は事業者の日.....
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 2017年9月まで5年間、原子力規制委員会の初代委員長を務めた田中俊一氏(75)が11日までに、福島県飯舘村で本紙のインタビューに応じた。在任中、審査に携わった使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)の正式合格が間近に迫る中、田中氏は事業者の日本原燃について「経済的に成り立つような会社にならない限り、安全確保は難しくなる」と指摘。核燃料サイクル政策に関しては「再処理で取り出したプルトニウムは消費しきれない。サイクルの当初の理念は破たんしている」と持論を展開した。[br] 原燃では16年、保安規定違反への対策が実行されていないのに完了したとする、社内での不適切な報告問題が発覚した。規制委は組織の在り方を問題視。原燃に対し、法律に基づいて原因究明と対策を求める「報告徴収命令」という異例の措置を取った。[br] 田中氏は、原燃幹部が各電力会社から集められている点を踏まえ、「指揮命令系統、責任体制が抜けていた」と規制委として厳しく対応した当時を振り返る。[br] その後もトラブルは相次いでいるが、「トラブルが起きること自体を否定する必要はない。大きな事故につながらないようにすることが重要」と指摘。立地地域の住民がトラブルの重大さを見極め、適切な是正策を求める姿勢が大切だ―と強調した。[br] 一方、再処理事業の経済的基盤を疑問視。現在は国の認可法人「使用済燃料再処理機構」(青森市)が各電力会社から拠出金を集め、原燃に委託費を支払っているが、「電力小売り全面自由化の中では、電力会社に拠出金を出し続ける余裕はない」と推測した。[br] 自動車産業などを例に、経済性のある事業ではトラブルが起きた際、企業利益を追求する観点から自発的に改善へ向かっていくのが「会社のロジック(論理)」と強調。同機構が資金を確保しているという状況で社員の行動が企業の利益に直接的につながらない構造では、安全を確保していくという企業体質を醸成するのは難しい―との考えを示した。[br] 核燃料サイクル政策については、中核となるはずだった高速増殖炉が事実上頓挫したことで、プルトニウムの消費はままならない―とし、サイクル政策からの脱却が必要と訴えた。[br][br][br] 〈略歴〉たなか・しゅんいち 福島市出身。東北大工学部原子核工学科を1967年に卒業し、同年に日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)に入所。2004年に副理事長。07年から3年間は原子力委員会委員長代理。日本原子力学会会長も務めた。12年9月~17年9月に原子力規制委員会の初代委員長。在職前から福島県で除染活動に取り組み、現在は同県飯舘村復興アドバイザー。75歳。茨城県ひたちなか市在住。インタビューに応じる田中俊一氏=7日、福島県飯舘村