「負けない。」館鼻岸壁朝市開幕 日常へ 初めの一歩

新型コロナウイルスへの感染予防を徹底しながら、営業に精を出す澤口京平さん(右)と種市一三さん=5日、八戸市
新型コロナウイルスへの感染予防を徹底しながら、営業に精を出す澤口京平さん(右)と種市一三さん=5日、八戸市
新型コロナウイルスのまん延を受け、当初から3カ月半遅れの開幕となった八戸市の館鼻岸壁朝市。久しぶりにハマがにぎわう中、出店者たちはその様子をかみ締めるように見つめていた。開催日には市内外から駆け付け、国内最大級の朝市を支えているだけに、ほと.....
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 新型コロナウイルスのまん延を受け、当初から3カ月半遅れの開幕となった八戸市の館鼻岸壁朝市。久しぶりにハマがにぎわう中、出店者たちはその様子をかみ締めるように見つめていた。開催日には市内外から駆け付け、国内最大級の朝市を支えているだけに、ほとんどが自粛期間中の収入減を余儀なくされた。ようやく開幕にこぎ着けたとはいえ、今後も感染の脅威にさらされ続ける出店者。喜びや不安、恐怖―。さまざまな感情を抱きながら、日常を取り戻すため、はじめの一歩を踏み出した。 [br] □      □[br] 鶏肉のさまざまな部位の唐揚げが人気の「ウワサの唐揚げ屋」は2011年に出店。10年目の節目となる今年、予期せぬ事態となり、朝市は3度にわたる開幕延期。店主の澤口京平さん(38)は「今年は無理かもしれない」と覚悟していた。店舗を持っていないため、ここ数カ月は朝市への出店以外の事業も手掛けた。減収の穴を埋めるため仕事に追われる日々。生活を守るため必死だった。[br] 待ち望んだ朝市だったが、開幕の知らせを聞いた時は、素直に喜ぶことができなかった。「自分も感染するかもしれないし、その現場にもなりうる」。出店の難しさについて考えさせられた。[br] 5日の朝市では来場者との間に透明なシートを設けるなど、予防対策を徹底。いざ始まると、不安以上にこみ上げたのは、商品を購入してもらえる喜びだった。未明から立ち続け、足は棒のようになったが、久しぶりの心地良い疲労感だった。[br] 「これから県内外から人が訪れることは確かに心配だが、これからも普段通り多くの来場者を迎え入れたい」と晴れやかな表情を見せた。 [br] □      □[br] バラエティーに富んだパンを取りそろえる「ライフベーカリー カスタード」。店主の種市一三さん(68)の豊富で軽妙なトークも売りで、常に笑い声が絶えない人気店だ。[br] 開幕の延期には動じなかった。「当然の措置だった」と割り切るが、売り上げは大きく減少。同市南類家4丁目に構える店舗には、心配してくれた常連客が次々と訪れ、その思いに支えられた。[br] ただ、諦めることはしなかった。「いつか必ず開幕できる」と信じ、自前でアルコール消毒液やフェースガードなどを購入して準備を進めた。[br] ついに迎えた開幕日。感染源となりうる恐怖を感じていたが、朝市の場で常連客らと再会できたことで、心の迷いも少し晴れたようだった。「よかったね」「おかえり」と、再会を喜ぶ市民からの声に勇気づけられ、互いに笑い合えたのがうれしかった。[br] 「出店者側も対策を徹底し、来場者も全員がマスクをしている。みんなの絆が強くなったよう」と種市さん。「今年の朝市は本当の意味で始まったばかり。試行錯誤しながら、今あるべき姿を探していく」。言葉に自然と力がこもった。新型コロナウイルスへの感染予防を徹底しながら、営業に精を出す澤口京平さん(右)と種市一三さん=5日、八戸市