青森県独自品種のサクランボ「ジュノハート」の全国デビューに向け、県や販売事業者は長期の計画を立て、準備を進めてきた。東京・新宿の高級果実の老舗「新宿高野」本店も、7月からの取り扱いが決まっている店舗の一つ。5年前から県と入念に打ち合わせを重ねてきた。[br] 「初めて聞いた時は『青森でサクランボ?』と、驚きました」と語るのは、同社広報の久保直子マネージャー。リンゴ産地のイメージが強い青森県がサクランボを推してきたことに戸惑いつつも、興味を持ったという。試食すると、たっぷりの果汁と甘さが口いっぱいに広がった。豊潤な味わいに手応えを感じ、「インパクトは十分」と、協力を決めた。[br] 生産量がわずかだった昨年は、県内販売のみのプレデビュー。話題を呼んで販売店には長い行列ができ、幸先のいいスタートを切った。「このままスムーズに全国デビューへつなげられれば」。関係者が期待を抱いていた中、新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた。[br] 真っ先に感染が広がった首都圏の経済的影響は大きく、都内では3月ごろから外出自粛により、あらゆる店舗で客足が鈍り始め、新宿高野本店も4月8日から約2カ月、休業を余儀なくされた。[br] それでも5月末には緊急事態宣言が解除され、徐々に客足が戻ってきた。同店での販売も予定通り行うこととなり、ジュノハートを使ったケーキとパフェを数量限定で発売する。久保さんは「ようやくデビューさせることができる。まず多くの人に知ってもらいたい」と、発売日を心待ちにしている。[br] 県農林水産部の赤平次郎次長は「首都圏では大変な状況も続いたが、デビューに向けてできることは全て尽くしてきた。感染拡大も落ち着き、ちょうどよいタイミングで発売日を迎えることができる」と胸をなで下ろす。生産者や販売先の調整に当たってきた県総合販売戦略課は「粛々と取り組んできた。デビューの準備はできている」と力を込める。