青森県内で新型コロナウイルス感染者が最後に確認されてから7日で1カ月を迎える。感染の有無を調べるPCR検査の実施件数は、5月末からは1日当たり3~5件程度に推移。感染症の専門家は「県内では感染拡大の抑え込みができている。県境をまたぐ往来の自粛や休業要請が功を奏した形」と評価する。一方、第2波、第3波が襲来する可能性があり、県や関係機関は感染予防対策の継続を呼び掛けるとともに、検査や患者の受け入れ態勢を強化する方針だ。[br] これまで県内では計27人が感染。3月23日に八戸市で初めて確認され、4月10日以降はクラスター(感染者集団)が発生した十和田市の認知症グループホームと、その感染者が入院し、院内感染が起きた市立中央病院の関係者に限られる。[br] 5月15日に感染者の1人が老衰などで死亡したが、重症化した人はおらず、同30日までに死亡者を除く全員が退院した。[br] PCR検査の実施件数は6月5日までに計882件。1週間当たりの件数では、4月6~12日が計157件で最多だった。[br] ウイルスの潜伏期間は最大2週間程度と考えられている。全国への緊急事態宣言の発令を受け、県は県民に不要不急の外出自粛を強く求め、店舗に対しては大型連休中の休業を要請。これらの対応が感染拡大防止につながったとみられる。[br] 青森県への緊急事態宣言は5月14日に解除となった。県新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の会長を務める弘前大の萱場(かやば)広之教授は取材に対し、「緊急事態宣言により市民意識が高まり、外出自粛や3密回避など基本的な行動パターンが順守されていた」との見方を示す。[br] 今後の感染拡大に備え、県は現在128床ある感染症病床の増床や、軽症者らが療養する宿泊施設の準備を進めている。八戸市では6月1日からPCRセンターが稼働し、検査態勢の強化が図られている。[br] 第2波、第3波について、萱場教授は「感染経路が追えない感染者が発生している地域や国からの持ち込みが危惧される。大規模なイベントで不特定多数の感染が発生すれば対応の限界がある」と指摘する。[br] 移動やイベント開催の制限が段階的に緩和され、徐々に元の生活へ戻りつつある。県は「手や指の消毒、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を取ることなど、感染予防の『新しい生活様式』に基づき、引き続き行動してほしい」と注意を促している。