感染症対策に貢献 市民病院に独自機器貸与する支援事業/八戸工業大

工業研究の成果を医療現場へ―。新型コロナウイルス対策に追われる医療従事者の力になろうと、八戸工業大は感染症対応の隔離室を即席で設置できる「陽陰圧化可能医療用空気清浄機」と、サーモカメラを八戸市立市民病院に貸与する支援事業を展開している。空気.....
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 工業研究の成果を医療現場へ―。新型コロナウイルス対策に追われる医療従事者の力になろうと、八戸工業大は感染症対応の隔離室を即席で設置できる「陽陰圧化可能医療用空気清浄機」と、サーモカメラを八戸市立市民病院に貸与する支援事業を展開している。空気清浄機には、同大が同病院と共同開発し、出動先で手術をする「ドクターカーV3」に使われている技術を応用。工業大学ならではの専門知識と高い技術で、地域医療を支える。[br] 同大は2012年から工学部機械工学科の浅川拓克准教授を中心にV3の開発に取り組み、16年には実用化に成功している。[br] 貸し出した空気清浄機は、室内の気圧を自在に調整する特殊な機能を備える。室内の気圧を下げる「陰圧化」により、内部の空気が外に漏れ出さないようにでき、インフルエンザやSARS、新型コロナウイルスといった細菌やウイルスの拡散を防げる。室内の気圧を上げる「陽圧化」の機能を使えば、逆に外気を遮断でき、清浄空間を作り出せるという。同様の技術は、V3のエアーテントに導入されており、出動先での高度な処置を可能にした。[br] 浅川准教授の研究室では、V3の開発過程で生まれた技術の改良と新たな活用の可能性を探るため、16年から空気清浄機の性能テストを実施。17年には同研究室に在籍した学生が、八戸港に寄港した外国船内で未知のウイルスが発生した―と想定し、簡易型隔離室の設置の実現性に関する卒業研究に取り組んでいた。[br] 「偶然にも今の状況が当時の研究のテーマと似ていて、驚いている。今こそ生徒たちの研究成果を生かすことができると考えた」と浅川准教授。今年2月に中国・武漢からの帰国者を乗せたチャーター機に同行した医師から、当時の中国では隔離室が足りていない現状を聞き、国内流行に備えて3月初旬に準備を進め、5月1日に市民病院に貸し出した。[br] 浅川准教授は「効果は既に実験で確認済み。自信を持って貸し出すことができた」と胸を張る。「医療崩壊を防ぐと同時に、最前線で闘う医師や看護師を守るためにも有効。工業大学として間接的に医療を支え、地域の『安心』につながれば」と力を込める。[br] 同病院では、既存の感染症病棟以外でも患者の受け入れが必要になった場合、新たな病床を確保するのに役立てる方針。今明秀院長は「地元の大学の技術を生かして医療現場を応援してもらえるのは、うれしいこと。安全に活用していきたい」と話す。