【新型コロナ】就職や進学、わが子東京へ 晴れの門出も心配尽きず

新型コロナウイルスの影響で、進学や就職で上京する人たちにとって複雑な春を迎えている(本文と写真は関係ありません) 
新型コロナウイルスの影響で、進学や就職で上京する人たちにとって複雑な春を迎えている(本文と写真は関係ありません) 
全国各地から桜の便りが届き始めたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、いつもとは違う春を迎えている。例年、進学や就職で多くの人が東京へ向かうが、そこは連日感染者の確認が発表されている、いわば“安全ではない地域”。大学進学で子どもを見送る家.....
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 全国各地から桜の便りが届き始めたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、いつもとは違う春を迎えている。例年、進学や就職で多くの人が東京へ向かうが、そこは連日感染者の確認が発表されている、いわば“安全ではない地域”。大学進学で子どもを見送る家族の心配は尽きず、念願だった都内への企業就職を果たした若者も不安を拭えない。例年なら心躍る季節の到来だが、多くの人が複雑な思いを抱えたまま、新生活のスタートを切る。[br] 「やったー、受かった」。2月中旬、都内の大学合格の知らせにはしゃぐ長女を、八戸市内の母親(48)は誇らしい気持ちで見ていた。昨年夏から娘の本格的な受験勉強が始まり、毎日遅くまで机に向かう日々。その姿を知っていただけに、思わず涙がこみ上げるほどの喜びを感じた。[br] このころ徐々に広まり始めたウイルスの存在は認識していたが、「そのうち終わるだろう」と、特に気にしていなかった。卒業式を終え、引っ越しの準備に追われていると、次々と感染者拡大のニュースが舞い込んだ。「東京は本当に大丈夫なのか」。一気に不安が募った。一方の娘は東京での暮らしが楽しみな様子で危機感がまるでなかった。[br] 入学式は当初の4月上旬から下旬へ変更となったこともあり、しばらくは都内の親せきの家で面倒を見てもらうことになった。娘は最初は不満そうにしていたが、連日ニュースを見ていたため、ようやく事態が飲み込めたようだった。[br] 3月27日、家具の手配やさまざまな手続きなどのため、娘は八戸を発った。「こんな気持ちで見送ることになるなんて。早く終息して、充実した大学生活を送ってほしい」。願うしかなかった。[br] 岩手県内の大学を卒業し、今春から憧れだった都内の企業で働くことになった関川佑たすくさん(22)=六戸町出身=。ただ、そこに笑みは少ない。「仕事より、初めての東京暮らしがこれって…。自分の生活がどうなっていくのか」。不安ばかりが浮かぶ。[br] 大学時代はアルバイトをしては海外旅行を楽しんだ。タイやインド、ドイツなど10の国と地域を回った。小さい時から世界の国々に興味があり、将来のための“下見”との思いからだった。[br] 「世界中を回ってみたい」―。夢をかなえるために挑んだ就職活動では、自分の思いのたけを伝えた。そして、その熱意は届いた。[br] 岩手県内では忍び寄るウイルスを横目に見ながら最後の学生生活を謳歌おうか。3月10日から友人とイタリアへの旅行を計画していた。[br] しかし、欧州もウイルスはまん延し、中止せざるを得ない状況に。同25日に友人に見送られ、東京へたどり着いたが、「どこかひっそりとした空気があり、自分が知っていた東京とは違った」。[br] 4月1日、15分に簡素化された入社式を無事に終えた。「気持ちはすっきりしないけれど、とにかくやるしかない」。決意が揺らがないよう、自分に言い聞かせた。新型コロナウイルスの影響で、進学や就職で上京する人たちにとって複雑な春を迎えている(本文と写真は関係ありません)