東日本大震災の発生から11日で丸9年となった。大津波などで甚大な被害を受けた北奥羽地方では、これまで各自治体の復興計画などに基づく事業が展開され、ハード面の復旧や新たな防災拠点の整備がおおむね完了。万が一の場合に備える防災や減災に向けた方策も進み、新たな段階へと入りつつある。ただ、全国的には今なお避難生活を余儀なくされている人がいるなど復興は道半ば。被災地では震災の記憶や教訓を風化させないための検討や取り組みなどが今後も続く。[br] 震災による全国の死者(1日現在)は、岩手、宮城、福島の3県を中心に1万5899人。行方不明者は2529人に上る。全国では今も約4万8千人が避難生活を送っている。[br] 津波が押し寄せた沿岸部を中心に、北奥羽の各自治体では震災直後に策定した復興計画などに沿って各事業が進められてきた。ハード関係はほぼ完了。ここ1年間では八戸―仙台間359キロの復興道路「三陸沿岸道路」が2020年度末の全線開通が決まった。[br] 復興事業実施の指針となる計画も三沢市、階上町、洋野町で16~19年度に終了。八戸市、久慈市、野田村は20年度が最終年度となり、総仕上げの段階に入る。[br] 1年後に発生から10年の節目を迎えるが、現段階で新たな復興計画策定の動きはなく、産業振興や災害に強いまちづくりなど新たなステージでの地域活性化へ進みつつある。[br] 八戸市など八戸圏域連携中枢都市圏を形成する8市町村が「国土強靱化地域計画」を合同でとりまとめ、さまざまな災害に圏域全体で対応する方針を決定。岩手県は19~28年度の県総合計画「いわて県民計画」で今後の復興の方向性を提示している。[br] 階上町は、災害前にあらかじめ対応方針をまとめておく「事前復興計画」の策定を検討。他自治体もハザードマップや防災計画の見直しなどを進めている。[br] 震災9年を迎え、八戸市の小林眞市長は「復興事業完了に向けて全力を挙げたい」と強調。洋野町の水上信宏町長は「あっという間だった。3月11日を震災を振り返る日とし、次世代につなぎたい」と話した。[br] 11日は野田村で海岸近くに献花台が設けられるほか、八戸市の蕪嶋神社で慰霊祭を予定。ただ、新型コロナウィルス感染症の拡大防止のため、当初各地で予定されていたイベントの大半は中止、縮小となった。