【震災から9年】洋野の原木シイタケ ブランド強化へ正念場

原木を運ぶ尾前孝一さん。洋野町産シイタケの価値向上へ生産者の正念場が続く=2日、洋野町
原木を運ぶ尾前孝一さん。洋野町産シイタケの価値向上へ生産者の正念場が続く=2日、洋野町
露地栽培の原木シイタケの生産が盛んな洋野町。2011年3月の東日本大震災では、福島原発事故の放射性物質による直接的な被害や影響はなかったものの、その後の風評被害で産地は打撃を受けた。さらに干物需要の伸び悩みや異常気象なども重なって近年になっ.....
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 露地栽培の原木シイタケの生産が盛んな洋野町。2011年3月の東日本大震災では、福島原発事故の放射性物質による直接的な被害や影響はなかったものの、その後の風評被害で産地は打撃を受けた。さらに干物需要の伸び悩みや異常気象なども重なって近年になっても市場価格は安定せず、震災前の状況まで回復し切っていない。このため、町内の生産者たちは品質の高さを引き続き追求しながら、知名度向上に力を入れる考え。震災発生から9年となる産地は正念場を迎えている。[br] 国内有数のシイタケ生産量を誇る岩手県内では震災後、国の検査で検出された放射性物質が基準値を超えたとして、一関市など県南地域の市町で出荷が制限された。[br] 対象外となった洋野町は生産を継続することができたものの、市場での風評被害や価格低迷に苦しんだ。町内で長年生産を手掛け、ブランド化に尽力してきた高屋敷幸雄さん(70)は「これまでにない危機を感じた」と振り返る。[br] 加えてスーパーなど小売店では、主に生食用で販売され、収穫が1年中可能な菌床シイタケが台頭。長期的な干物の需要低下も、干しシイタケとして販売されることが多い原木シイタケにとって逆風となった。県外出荷が中心で地元消費が少ないこと、暖冬や小雨などの気象で豊凶作の差が激しかったことなどもマイナスに影響したという。[br] そんな状況を乗り切ろうと、高屋敷さんを中心とした生産者たちは高品質を維持するための努力を続けてきた。町や久慈地域で行われる品評会は震災後も継続され、全国大会で輝かしい賞を受けた出品者もいる。[br] また、生産者による団体「町しいたけ産業振興協議会」が定期的に研修会を開き、生産者同士で栽培技術の情報を交換。年1回の町農業祭では、一般住民向けに原木への植菌作業を体験してもらうイベントを行うなど、地元消費者へのアピールも忘れない。[br] 「生産者の減少や価格の面から、『震災がなければ…』と考えることはあるが、まずは生産量を安定させ、消費者に選んでもらえるようにしたい」と協議会の尾前孝一会長(51)。今後も、町産ブランドの強化を目標に掲げる。 原木を運ぶ尾前孝一さん。洋野町産シイタケの価値向上へ生産者の正念場が続く=2日、洋野町