企業活動に打撃を与えた東日本大震災後、青森県は1953年度に創設した特別融資制度で企業の復旧をサポートしてきた。単年度の融資件数は2011年度の1950件をピークに減少し、19年度は12月末現在で3件。新規申請者は大幅に減り、復旧の順調さをうかがわせる。一方、災害から企業を守る「事業継続計画(BCP)」などの仕組みづくりに関心を持つ企業は少ない。自然災害や感染症の被害拡大が取り沙汰される中、震災の教訓を踏まえながら「災害に強い企業」の在り方を再考する時期に来ている。[br] 県によると、県内の震災被害額は24市町村で計576億円。燃料不足や自粛ムードなどにより、県内企業の90・9%が消費低迷などの影響を受けた。[br] 県は震災直後から、特別保証融資制度で企業を支援してきた。融資件数は震災直後の混乱が落ち着き、被害状況が明らかになってきた11年4月以降に急増したが、間もなく「申請なし」になると予測される。[br] 融資額も件数と同様の傾向で、12年度が最多の405億6千万円。19年度は12月末現在で6千万円となっている。同年同月末の残高総額は約71億円。残高369億円だった11年度から返済は順調に進んでおり、企業活動の着実な復旧を裏付けている。[br] 企業の復旧を直接的に支える融資は有効な手段だが、今後は被害を最小限に食い止める備えも重要になってくる。サプライチェーン確保のほか、従業員、設備、データの避難やバックアップ手段などをまとめた事業継続計画、国が19年7月から策定を呼び掛けている「事業継続力強化計画」がその要となる。[br] 県が把握する県内のBCP策定企業はわずか22社。事業継続力強化計画の認定を受けているのも43社にとどまる。中小企業や一般商店などを含め、約5万9千社あるとされる県内事業所の数からすれば、少なさが際立つ。[br] 強化計画を策定し、国の認定を受けることにより、税制優遇や補助金が優先的に採択されるなどのメリットもある。県の担当者は「生活の復旧ができても、職場がなくなれば多くの人は居住地を離れてしまう。企業の責任者にはそのことを考えてほしい」と訴える。