【超高齢社会の先へ】第2部 介護現場のリアル(3)

ケアマネジャー(右)から介護サービスの説明を受ける山本玲子さん(仮名)。「いろんな悩みを聞いてもらい精神的に助けられています」=18日、十和田市
ケアマネジャー(右)から介護サービスの説明を受ける山本玲子さん(仮名)。「いろんな悩みを聞いてもらい精神的に助けられています」=18日、十和田市
介護の現場は施設だけではない。ヘルパーやデイサービスなどの介護サービスを利用しながら、自宅で介護を受ける「在宅介護」という選択肢もある。「住み慣れた自宅で暮らしてほしい」という家族と「家族に迷惑を掛けたくない」という要介護者―。それぞれの思.....
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 介護の現場は施設だけではない。ヘルパーやデイサービスなどの介護サービスを利用しながら、自宅で介護を受ける「在宅介護」という選択肢もある。「住み慣れた自宅で暮らしてほしい」という家族と「家族に迷惑を掛けたくない」という要介護者―。それぞれの思いは複雑だ。自分や家族が要介護者になった時、あなたならどのような介護を選ぶだろうか。認知症の母(77)を自宅で介護する十和田市の山本玲子さん(54)=仮名=を取材した。[br]   ◇    ◇[br] 2月のある日、母は自宅を出て行ったきり帰ってこなかった。家族総出で探したが見つからず、警察署に捜索願を提出。日が傾きかけたころ、親戚が寒空の中、防寒着も身に付けずに歩いている母を発見した。母の“家出”はこれで3回目だ。[br] 母は持病で入院した際に検査をしたところ、認知症と診断された。「自宅で暮らしたい」という母の強い希望もあり、山本さんは介護のため仕事を辞めた。[br] 食事やトイレ、入浴など身の回りのことに介助を必要とせず、会話も成立しないこともない。一見、認知症とは思えないが、山本さんには以前とは違う母の言動に戸惑いを隠せない。「あんなにしっかりしていたのに。以前とのギャップがつらい」と胸の内を語る。[br] 洗濯をするはずの洋服をタンスにしまったり、居間に飾っていた人形が鍋の中に入っていたり、仏壇の仏具一式がなぜか居間のテーブルに並べられていたり。「何をしようとしているのか分からない。もちろん、本人には迷惑を掛けているという認識がないのは分かってはいるのだけれど」と目を潤ませる。[br]   ◇    ◇[br] 家出など何かがあるたびに親戚からは「施設に入れた方がいい」と勧められるが今はまだ考えていない。「身体的な機能に衰えはないし、『家で暮らしたい』という母の希望はかなえてあげたい」と山本さん。[br] そんな山本さんにとって、居宅介護事業所のケアマネジャーは心強い存在となっている。親戚同士では感情的な議論になりがちだが、ケアマネジャーは専門的な観点から親身に相談に応じてくれる。「母のためのケアマネジャーだけど、私自身も精神的に助けられている」と感謝している。[br] 今は介護中心の生活だが、いずれは復職をして介護と両立したいと考えている。「介護休暇や時短勤務など、もっと介護に理解のある職場が増えてほしい」と切望すると同時に、介護離職による経済的な不安もこぼす。「離職で収入がゼロになり将来が不安。介護離職者への経済的な支援や補助制度があれば」と願う。[br]   ◇    ◇[br] 居宅介護支援事業などを手掛ける十和田市のさくら社会福祉士事務所の中渡俊明代表は「在宅介護にはさまざまなケースがあり、単に支援サービスを提供する仕組みだけではどうにもならないことがある」と指摘する。[br] 在宅で介護する家族がいるだけでも幸せかもしれない。地方では特に1人暮らしの高齢者が増加している。中渡代表は「独居の場合は生活状況を把握することが難しく、最悪の場合は『孤独死』につながってしまう」と危惧。地域の高齢者支援センターや民生委員、病院などが一体となって要介護者やその家族を支えていく仕組みづくりの必要性を訴える。ケアマネジャー(右)から介護サービスの説明を受ける山本玲子さん(仮名)。「いろんな悩みを聞いてもらい精神的に助けられています」=18日、十和田市