【超高齢社会の先へ】第2部 介護現場のリアル(2)

介護士として働いていた当時を振り返る田島大介さん(仮名)。「介護の仕事は好きだったけど、利用者のためにならない介護の現実に幻滅した」=1月、青森県内 
介護士として働いていた当時を振り返る田島大介さん(仮名)。「介護の仕事は好きだったけど、利用者のためにならない介護の現実に幻滅した」=1月、青森県内 
介護需要がますます高まる2025年が迫る中、青森県内では現状ですら介護職員が不足している。要因に挙げられるのは県外への人材流出と、若い人材の離職率の高さだ。介護の道を志したにも関わらず、なぜ離職してしまうのか。介護施設で約3年間働き、悩んだ.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 介護需要がますます高まる2025年が迫る中、青森県内では現状ですら介護職員が不足している。要因に挙げられるのは県外への人材流出と、若い人材の離職率の高さだ。介護の道を志したにも関わらず、なぜ離職してしまうのか。介護施設で約3年間働き、悩んだ末に退職を選んだ田島大介さん(24)=仮名=の事例から介護現場の現状を考える。[br]   ◇    ◇[br] 「どの職員も時間に追われていて職員同士がぎすぎすしていた。笑顔がなく利用者とのコミュニケーションもない、むなしい介護」と当時を振り返る田島さん。介護職に従事する母の姿に憧れ、大学卒業後は県内の介護施設に就職した。[br] 配属先の職場は女性35人に対し男性2人。圧倒的に女性が多く、力仕事を中心に若手の男性である田島さんに仕事が集中した。就職当初は「一人一人に寄り添ったケアをしよう」と目標を掲げていたが、日々の仕事に追われる中で、思い描く介護ができなくなった。[br] ベテラン介護士は事務作業に追われ、現場に目を向ける余裕がなく、研修制度の不備にも不安を覚えた。不慣れな人のカバーや、急な退職者の穴埋めのため、残った介護士が残業や休日返上でやり繰りしたものの、経営者側の目には「現場は今いる人員で回せている」としか映っていなかった。[br] 人員補充など職場環境の改善を求めて上司に何度も相談したものの、現場スタッフの声が経営者側に届くことはなく、就職してから半年間で、10人いた同期のうち5人が辞めていった。[br] 田島さんも「利用者目線で働きたい」という現場側の気持ちと、「経費を削減したい」という経営者側の考えとの溝を痛感し、悩んだ末に離職した。「丁寧なケアを実践したくてもできない。正直言って幻滅した」と表情を曇らせる。「一番の被害者は利用者。しっかりとしたケアを実践できるような職場だったら、もっと仕事を続けたかった」[br]   ◇    ◇[br] 八戸学院大健康医療学部の小柳達也准教授は「介護現場は忙しいからこそ職員が協力し合い、質の高い介護を提供しなければならない」と強調する。[br] 介護労働安定センターの2018年度介護労働実態調査によると、県内の介護士の多くは「人手不足」や「身体的・精神的な負担」を不満に感じている。離職理由では「結婚や出産、育児」や「人間関係」「法人の方針や運営理念への不満」が大多数を占める。[br] 小柳准教授は、離職理由の大半が低賃金や待遇ばかりではないことに注目する。現場スタッフや若手の意見が通りにくい現状にも触れ、「よりよいケアのために、同僚で率直な意見を交わし合いながらお互いに学び合える職場づくりが必要」と言及。「利用者の異常や問題点を報告し、情報を共有することは事故防止にもつながり、職員を守ることにもつながる」と話す。[br] 今後は、介護職員のキャリアアップ支援を目的に各自治体の社会福祉協議会が実施する「福祉職員キャリアパス対応生涯研修」の重要度も、ますます高まりそうだという。その上で「介護職員が成長を感じながら仕事ができるよう、事業者側がスキルアップの機会を提供していかなければならない」と提言する。介護士として働いていた当時を振り返る田島大介さん(仮名)。「介護の仕事は好きだったけど、利用者のためにならない介護の現実に幻滅した」=1月、青森県内