「5年先、10年先は…」 後継者不足に危機感抱くリンゴ農家

リンゴの袋詰め作業に打ち込む船場敏さん。将来の農園経営に悩みを抱えている農家の1人だ=6日、三戸町梅内
リンゴの袋詰め作業に打ち込む船場敏さん。将来の農園経営に悩みを抱えている農家の1人だ=6日、三戸町梅内
全国的な少子高齢化や人口減少を反映し、北奥羽地方のリンゴ農家の間で近年、後継者不足を心配する声が高まっている。営農活動は50、60代が中心となっており、関係者は「高齢化が進み農作業が難しくなる5年先、10年先はかなり厳しい状況になるのでは」.....
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 全国的な少子高齢化や人口減少を反映し、北奥羽地方のリンゴ農家の間で近年、後継者不足を心配する声が高まっている。営農活動は50、60代が中心となっており、関係者は「高齢化が進み農作業が難しくなる5年先、10年先はかなり厳しい状況になるのでは」と危機感をにじませる。ただ、抜本的な対策に向けた動きはなく、先行きは見通せない。[br] 農林水産省が5年ごとに実施している「農林業センサス」によると、青森県南地方のリンゴの栽培経営体数は2015年が1266件で、10年の1461件より195件減少。市町村別でも南部町が685件から582件、五戸町は311件から268件、三戸町は233件から212件、八戸市は180件から155件と、いずれも減っている。[br] 古くから県南地方のリンゴ栽培を支えてきた三戸町。町農林課の担当者は「体感的な話だが、地域の共同防除組合などの総会でも出席者は50、60代が大半だ」と語り、「昔は地元の集会場を使い、若手がお酒をついで回ったものだが、最近は準備する人手もなく、町内の飲食店を使うようになってきた」と続ける。[br] 町内では人手不足対策として、共同で剪定(せんてい)、出荷する防除組合もある。町側は野菜で先例のある福祉分野との連携なども視野に入れるが、浸透するかどうかは未知数だ。[br] 同町梅内の船場敏さん(63)はリンゴ農家の3代目。自ら贈答用やスーパーなど直接取引の販路を切り開き、5年ほど前からは法人化。常時作業員数人を雇用し、夏場にトマト栽培をして収入を絶やさないようにするといった工夫を重ねている。[br] 「自分が就農したころから、収入が安定しているサラリーマンを選ぶ傾向は続いている」と話す船場さん。園地の維持には後継者だけでなく、作業員の高齢化対策も喫緊の課題だ。今後について「これまで築いた栽培の基盤や販路、顧客を無駄にしたくない」と本音を語り、「子どもが継ぐか、第三者を募るか分からないが、誰でもやりやすいような栽培と販売のシステムを作っておきたい」と前を向く。[br] 岩手県北地方でも状況は同じ。二戸市は2016年に後継者育成の一環で、「地域おこし協力隊」として当時30代の男女2人を採用。19年から男性はリンゴ、女性はブドウとサクランボ農家として活動している。[br] 2人とも農業未経験ながら、地元農家の指導を受けて腕を磨き、念願の独立を果たした。ただ、全国で新規就農目的の協力隊募集は多数あり、市農林課の相馬剛主任(39)は「応募が少なく、課題は多い」と指摘する。リンゴの袋詰め作業に打ち込む船場敏さん。将来の農園経営に悩みを抱えている農家の1人だ=6日、三戸町梅内