▽決勝
三 沢 000 000 000 000 000 000―0
松山商 000 000 000 000 000 000―0
(延長18回大会規定により引き分け)
(松)井上―大森
(三)太田―小比類巻
▽犠打 松5(福永、平岡2、谷岡、田中)三5(小比類巻、八重沢、高田、谷川、太田)▽盗塁 松6(谷岡、大森2、福永、井上、樋野)三1(高田)
▽失策 松2(谷岡、樋野)三0
【評】スコアボードには延々とゼロが続く。両軍とも再三チャンスを迎えながら決定打を奪えない。三沢・太田の速球、松山商・井上の鋭いカーブが打者をほんろうする。がっぷり四つに組んだ両軍は一歩も譲らず、ついに延長十八回、0―0のまま大会規定により決勝では初の引き分け、再試合となった。
太田は立ち上がり制球を欠き、松山商に2四球を与えて二死二、三塁のピンチを招いたが、五番久保田を三ゴロに打ちとって脱した。
三沢はその裏二死から太田が右前安打したがものに出来ず、二回裏も無死から菊池が左前安打したが、併殺でチャンスをつぶした。
太田は前半やや球速を欠いたが、カーブをときおりまぜた重い球で松山商を抑え、一方松山商・井上も落ちるカーブを決め球に三沢に決定打を許さない。松山商は七、八、九回とやや疲れの見えはじめた太田に襲いかかる。しかし七回は二死満塁に二番福永が中飛で倒れ、八回は二死二塁に三遊間へ飛んだ痛烈なゴロを桃井の横っ飛びに好捕する超美技にはばまれた。九回も徹底的なバント作戦でかきまわそうとしたが、太田がすばらしい守備を見せた。
三沢も井上の落ちるカーブに手をやきながらも七回二死二、三塁、八回は四球と安打で一死一、二塁のチャンスを迎えたが、井上の力投の前にどうしても均衡を破れない。ついに今大会二度目の延長戦へもつれ込んだ。
延長戦へはいってから太田の速球は一段とスピードを増したのに対し、井上はしだいに疲れが出たのかカーブのキレがにぶくなった。松山商は十一回二死から西本が安打、十二回は一死から二本の安打が出たが、太田をくずせない。
三沢も十三回までは三人ずつで片づけられたが十五回になって大きなヤマ場を迎えた。この回先頭の菊池が井上のカーブの曲がりはなを左前安打し、続く高田のバントを前進した谷岡がはじいて無死一、二塁、谷川は手堅く送り一打サヨナラのチャンスを迎えた。しかしコントロールに自信のある井上は、滝上哲を敬遠気味の四球で歩かせ満塁策をとった。続く立花にもスクイズを警戒したか三球ともボールとなった。だが冷静な井上は続けてストライクを二つとり2-3に持ち込み、六球目、打った立花の打球は井上のグラブをはじいて前進してきた遊撃手樋野の真正面へころがった。樋野のバックホームは一瞬早く、三塁走者の菊池は本塁で封殺。八重沢も大きな中飛に倒れてチャンスを逃した。
井上は十六回にも2四球と遊ゴロ失でまたも一死満塁のピンチを迎えたが、高田の2-2からのスクイズが松山商バッテリーにはずされ、空振りに終わって、飛び出した三塁走者の小比類巻も三塁に戻れずタッチされて無得点に終わった。
かくして熱戦十八回―。三沢も松山商もついに本塁を踏むことが出来なかった。ありったけの力をふりしぼる三沢の太田と松山商の井上。マンモススタンドを埋めた大観衆もまれに見る力のこもった好試合に酔った。
技術的なことを指摘するのは高校野球では酷かもしれない。とにかく気力で投げ抜いた三沢の太田、松山商の井上に賛辞を贈りたい。
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1969年 全国高校野球選手権大会決勝 三沢 VS 松山商(愛媛)[/right]