老舗ののれん、元従業員が継承 三戸の居酒屋「馬酔木」 

久々に常連客を店に迎え、笑顔を見せる(奥左から右に)大沢萬治さん、舘秀子さん、大沢イネ子さん
久々に常連客を店に迎え、笑顔を見せる(奥左から右に)大沢萬治さん、舘秀子さん、大沢イネ子さん
三戸町二日町で約40年にわたって地域に愛され、昨年10月に閉店した居酒屋「馬酔木(あしび)」が今月、再開した。店主の大沢萬治さん(75)、イネ子さん(71)夫妻の人柄と「鉄火ラーメン」などの名物メニューが多くの人を引き付けてきたが、昨年10.....
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 三戸町二日町で約40年にわたって地域に愛され、昨年10月に閉店した居酒屋「馬酔木(あしび)」が今月、再開した。店主の大沢萬治さん(75)、イネ子さん(71)夫妻の人柄と「鉄火ラーメン」などの名物メニューが多くの人を引き付けてきたが、昨年10月、萬治さんが体調を崩して閉店。そこで立ち上がったのが元従業員の舘秀子さん(44)だった。「わが家のような店の灯を消したくない」。決意を胸に、老舗ののれんを掲げる。[br][br] 馬酔木は1978年に同町二日町の別の場所で開店し、89年に現在の店舗へ移った。辛さが選べる「鉄火ラーメン」や「どじょう唐揚げ」「しそ餃子(ぎょーざ)」など萬治さんが腕を振るう料理が好評を博し、イネ子さんの接客も相まって地域の名物店として親しまれてきた。[br][br] しかし2020年9月、萬治さんが目まいに襲われ、急きょ入院。すぐに退院したが体調は全快せず、10月下旬に閉店した。[br][br] 「できることなら続けたいが後継者もいない。仕方ない」。気落ちする萬治さんの元に、閉店から1週間ほどして舘さんから連絡があった。「私がやりたい」。店を受け継ぎ、再開させるという打診だった。[br][br] 舘さんは19歳で同店の従業員になり、出産のため退職するまで7年間、調理や接客を担った。店について「自分の家のような場所。マスター(萬治さん)とママ(イネ子さん)も親のような存在」と語る。[br][br] 退職後は客として店へ通い、家族と一緒に利用することもあった。閉店間際は店の営業を手伝い、「もうこの店に入れないなんて…。何とか続けられないだろうか」と思案していた。舘さんの提案に対し、萬治さんの回答は「秀子ちゃんならいいよ」だった。[br][br] 町内で調理師として勤務する傍ら、さまざまな手続きや内装の改修を進め、3月末で仕事を退職。満を持して迎えた開店日は、店内にも玄関先にも地域住民から贈られた花があふれた。[br][br] 開店と同時に常連客が続々と来店。約40年前から店に通う同町の会社員久慈邦雄さん(66)は「店がなくなる時は涙が出た。自分の居場所が戻ってきてうれしいよ」と目を細める。[br][br] 当面は大沢さん夫妻も営業を手伝うつもりで、「秀子ちゃん流の店にしてもらえればいい。できるだけ助けたい」とエールを送る。[br][br] 調理場を切り盛りし、来店者を迎えた舘さん。忙しい中でも、笑みは絶えなかった。[br][br] 「やっぱり三戸には馬酔木がないと。自分だけじゃなく、たくさんの人にとって家みたいな場所だから」久々に常連客を店に迎え、笑顔を見せる(奥左から右に)大沢萬治さん、舘秀子さん、大沢イネ子さん