「イベントは軒並み中止。行楽客も全然来ない。これが今年も続けば本当に苦しい…」[br][br] 青森県内有数の観光地である十和田湖、奥入瀬渓流を抱える十和田市の中心部に立地する老舗ホテル「十和田シティホテル」の下山勝代表(65)は不安を吐露する。[br][br] 新型コロナウイルスの影響で売り上げが激減した。春から秋のハイシーズンは団体客が消失し、忘新年会でにぎわう年末年始はキャンセルが相次ぎ、売り上げはほぼゼロだった。事業と雇用を守るため、資金繰り支援や雇用調整助成金を活用した。「何とかしのいできたが、限界がある。休業する同業者も出てきたし、精神的にも厳しい」とため息をつく。[br][br] 県経済をけん引してきた観光産業は、新型コロナの感染拡大で大打撃を受けている。右肩上がりだった訪日外国人は消え、国内客も低迷。2020年の県内主要宿泊施設の延べ宿泊者数は153万63人と前年比34・3%減、主要観光施設の延べ入り込み客数は44・5%減の537万1606人と落ち込んだ。[br][br] 県は20年度、事業者の事業継続を目的として感染リスクの低い青森、岩手、秋田の北東北3県民向けの宿泊割引を展開。国の観光支援策「Go To トラベル」事業が一時停止する中、今年2月16日までに累計16万8946人が利用するなど一定の効果を上げた。[br][br] 21年度は観光分野を経済回復の柱とし、28億4955万円(20年度補正予算案含む)を計上。事業者支援を続けながら、感染防止策を講じた祭りの形を検証する「祭」リノベーション事業に1233万円、リモート観光に1354万円を充てるなど、コロナ禍に応じた事業創出を図り、“反転攻勢”を見据える。[br][br] 中でも、最大の事業費13億9392万円を投じるのが、秋以降の実施を予定する、宿泊費や航空運賃を割り引く全国対象の旅キャンペーンだ。20年度の施策を継続し、割安感を誘因に需要喚起を狙う。[br][br] トラベル事業が早期再開し、ワクチン接種が進むとともに、観光への関心が高まり、旅行割引で需要回復―。そんな理想のシナリオを描くが、今後の感染状況は見通せず、施策の効果に不透明感が漂う。[br][br] 「キャンペーンはありがたいが、施設や地域で販売数に差があるなど、見直してほしい部分もある」と指摘する下山さん。「需要喚起策だけでなく、事業者への直接支援など感染状況を見極めて柔軟に対応してほしい」と訴える。[br][br] ◆ ◆[br] 21年度の青森県当初予算案が発表された。主な分野で施策の狙いや課題を探る。